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(AL関連の実践)【高校】静岡県内の市立高等学校5校によるアクティブラーニング研修

by 沼津市立沼津高等学校・富士市立高等学校・静岡市立清水桜が丘高等学校・静岡市立高等学校・浜松市立高等学校

(静岡県市立)ウェブサイト:沼津市立沼津高等学校富士市立高等学校静岡市立清水桜が丘高等学校静岡市立高等学校浜松市立高等学校

 

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第1節 研修の概要

⑴ 研修の経緯
 沼津市立沼津高等学校から、ユニット(議論・検討する集団)によるアクティブラーニング型授業の実践について提案があり、他の都市立4校もユニットをつくり、都市立5校が合同で研修を実施することになった。各校において5名程度の教員がユニットを結成し、授業案の作成・授業公開・評価の検討等を実施し、授業研修の中心的な役割を果たしている。

 

⑵ 研修の方向性
  • アクティブラーニング「生徒の主体的な学び、対話的な学び、深い学び」を意識した授業形態や授業技術の研究、課題の分析
  • 高校教育改革(新テスト等)を見据えたAL授業の研究(教材研究、視察等)
  • 校内でAL型授業の共有化(教科・科目・学年)、授業計画や方向性の検討、体系化
  • 5校での合同研修
  •  

    ⑶ 都市立5校における公開授業等の実施

     

     

     

    第2節 静岡県内5都市立各校の取り組み

    ⒧ 沼津市立高等学校の取り組み
    ① ALユニットの結成(4月)
     国語、地歴、数学、理科、英語から各1名、計5名の教員から構成される(国語、英語は中等部の教員)。ユニットの目的は、ALを基盤とする中高一貫校としての授業形態の研究であり、最終的には全職員に提示することを目標としている。
    ② AL実践授業研修[校内](6月)
     ユニットメンバーによる授業実践。国語(中2)、世界史(高2)、数学Ⅰ(高1)、化学基礎(高1)、英語(中2)で実施し、事後に教科会および研究協議を行った。
    ③ 全職員を対象とした、研修会の実施(8月)
     期日:2016年8月3日(水)14:00~16:00
     講師:産業能率大学 情報マネジメント学部教授 松岡 俊 氏
     内容:「アクティブラーニング実践」をテーマとした研修会
    ④ 埼玉県越谷高校へ学校訪問、授業参観(9月)
     期日:2016年9月21日(水)10:00~13:00
     内容:学校概要説明、授業改善について、授業参観(生物)、研究協議
    ⑤ 公開授業によるAL型授業研究(11月)
     期日:2016年11月11日(金)14:00~16:30 ※校外参観者43名
     内容:公開授業、研究協議、課題等の意見交換、指導主事による指導助言
    ⑥県立都市内高等学校開催の公開授業へ参加(10月~11月)
    ⑦来年度のAL推進に関する取り組み検討・策定(11月~2月)

     

    ⑵ 富士市立高等学校の取り組み
    ① 研修テーマの設定
     本校の特色である「探究学習」の方法を活かした授業を実施することを目指し、「基礎学力の定着とアクティブラーニングの研究」をテーマに、全教員が11月の研修週間までにアクティブラーニング型の授業を実践することを提案した。
    ② 授業を支援する環境の整備
    ・関係書籍や学習指導案の事例を閲覧できるように、職員室に「アクティブラーニングコーナー」を設置。
    ・企画研究室に、授業で使用する付箋とホワイトボード(30枚)を設置。
    ・外部で行われる研修会や発表会に参加し、情報を共有。
    ③ 職員研修週間(8月)
     期日:2016年6月13日(月)~17日(金)
     内容:研究授業および研究協議を実施する。全職員が他の教員の授業を参観し、感想や参考になった点を報告する。
    ④ 学校開放・探究学習発表会(10月)
     期日:2016年10月8日(土)
     内容:総合的な学習の時間「究タイム」の成果として、1年生はグループで設定したテーマを探究するポスター展示、2年生は地域の課題解決策を提案する「市役所プラン」の発表、3年生は自分の生き方を探究する「自分スピーチ」の発表を行い、広く一般に公開する。
    ⑤ 11月職員研修週間(11月)
     期日:2016年11月7日(月)~18日(金)
     内容:全職員が他の教員の授業を参観し、感想や参考になった点を報告する。また、11月8日(火)には金沢工業大学名誉学長 石川 憲一 先生をお招きして学術顧問による講話を実施した。
    ⑥ 公開授業・公開授業意見交換会(11月)
     期日:2016年11月10日(木)
     内容:都市立高校の先生方を招いて研究授業を公開し、意見交換会を実施。
    ⑦ アクティブラーニング実践報告書の提出および報告会
     年度中に実施したアクティブラーニング型の授業について全教員が報告書を作成し、各教科で実践を報告しあうとともに、授業に関する話し合いを行う。

     

    ⑶ 静岡市立清水桜が丘高等学校の取り組み
    ① 概要
     都市立高等学校の取り組みの一環として授業実践を重ねつつ、ICT機器を活用したAL型授業(清水桜が丘AL)を研究する。
    ② 研究経過
     国語、地歴・公民、数学、理科、外国語、商業の6教科から、1人ずつメンバーを選出し、総括を副校長及び研修課長としてチームを構成した。メンバーは11月にICTを活用したAL型授業を公開実施することを目指して研究協議および他校視察等を行った。公開授業における指導案の形式を「授業デザインシート」、事後の評価等を「振返りシート」として統一した。
     11月8日に県総合教育センター指導主事を助言者としてお招きし、公開授業、研究協議を実施した。高校だけでなく、近隣中学校からも参加があった。
     2月に、研究成果と課題、他校視察の状況等を取りまとめ、成果報告書を作成して全教職員に配布した。

     

    ⑷ 静岡市立高等学校の取り組み
    ① ユニットメンバーによる授業公開(10月および1月)
    ・10月12日(水)外国語、10月17日(月)数学、10月25日(火)理科
    ・10月18日(火)※指導主事訪問
      国語、外国語、地歴公民、数学、保健体育、家庭
    ・1月24日(火)※職員研修(公開授業・講演会)
      国語、外国語、地歴公民、理科
    ② 授業を支援する環境の整備
    ・アクティブラーニングに関連する書籍を購入し、ユニットメンバーで読みあい、情報交換をする。
    ・AL型授業で使用できる道具(円卓ボード、ホワイトボード、さし棒、付箋等)を購入し、周知する。
    ・研究授業では2人組(授業者とフォロー)で授業づくりおよび評価等を行う。
    ・ ユニットメンバーによる各種研修会や他校研究会への参加
    ③ ユニットメンバーによる意見交換と情報共有
    ・11月2日(水)中間意見交換会[情報交換とALユニット研修の課題について]
    ・12月12日(月)研究会準備会[1/24研究会の企画、役割分担]

     

    ⑸ 浜松市立高等学校の取り組み
    ① 研究の方法
     「アクティブラーニング型授業の実践および授業改善」をテーマとする。5年経験者および10年経験者研修該当者4名を中心に研究授業を行い、AL型授業の研究、取組意識の共有化を図る。
    ② 研究授業・研究協議等
     9月23日(金)英語、10月20日(木)数学、11月22日(火)保健体育[タブレットPCを活用した授業実践]、2月27日(月)英語
    ③ アクティブラーニングに関する全体研修会
     期日:10月26日(水)
     内容:県総合教育センター指導主事による研究協議(指導助言)
    ④ 市立各高校の公開授業、研究協議への参加

     

     

    第3節 静岡県内5都市立高等学校合同研修会

    ⑴ 授業公開および講演会のスケジュール
     期日:平成29年1月24日(火) 場所:静岡市立高等学校
     日程等:

     

     ※1:中心授業、溝上教授参観

     

    ⑵ 溝上教授による講演『大学、社会で伸びる高校生とアクティブラーニング』
     青年心理学と高等教育がご専門の溝上教授に講演頂いた。内容は、①「学校から仕事・社会へのトランジション(変わり目・移り変わり)改革」、②「社会の変化と学習と成長パラダイム(考え方や認識の枠組み)への転換」、③「アクティブラーニング型授業への転換」であった。「大学生になっても伸びる学生は、他者と議論し発表するという外化する力がある。しかし、対人関係が得意なくらいでは身に付かない」、「大学入試という競争だけでは、さらなる少子化のなかでは、これからの問題を解決する力を持つ人間は育成できない」、「外化なしの学習は、思考力育成を放棄している。講義+アクティブラーニング=アクティブラーニング型授業である」等、熱意あふれる講演であった。京都大学や大阪府立大学・社会人調査等の分析データを取り入れながらわかりやすく解説してくださり、参加者からの質問にもお答え頂いた。

     

      

     

     

    第4節 「アクティブラーニング研修」に関する成果と課題

    ⑴ 各校のまとめ
  • 総合的な学習の時間「究タイム」を通じて、生徒は探求的な学びの手法を身につけ、協働して調べ分析し発表するプロセスを繰り返し経験する。それを教科指導の中でも活かすべく全教員が「とにかくやってみよう」と、実践できたことが最大の収穫である。アクティブラーニングを基礎学力の充実に資するにはどうすべきかということと、評価の方法を検討することが今後の課題である。[富士市立高校]
  • 公開授業では多様なAL型授業を提示できた。また、多くの参観があり、デザインシートを含め、授業改善に向けた良い刺激になった。ALに関するハードルが下がったと感じている教員もいる。課題としては、ファシリテーターの育成、ICT機器の使用と調整に係ることが意見として挙げられた。[静岡市立清水桜が丘高校]
  • 都市立高校によるユニットは、現在の教育界の様々な課題への対応や次期学習指導要領につながるアクティブラーニング型授業の研修が目的でスタートした。試行錯誤する中でのスタートではあったが、最後の合同研修では、教員間で目的のオーソライズ(共通認識)が深まった。次年度以降の活動につなげるための下地が整い、学校全体で取り組む機運が高まってきている。[静岡市立高校]
  • 次年度に向けての課題として、他の市立高校と同様に各教科からのユニットを拡大し、授業実践を進める必要がある。また、校内での授業見学・公開授業の拡大と、他校(他県を含む)の先進校見学による研修を実施したい。[浜松市立高校]
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    ⑵ 今年度のユニット研修に関するアンケートより(回答者:AL研修ユニットメンバー)
    ① ユニット合同研修会(1/24)に参加して、自身の授業改善の参考になったか
      ア:参考になった 75%       イ:概ね参考になった 15%
      ウ:あまり参考にならなかった 0%  エ:参考にならなかった 0%
    ② 今年度のユニットの活動について(所感)
    ・授業改善の機会として大変良い学びになった。他校の先生方と交流できたことが、視野を広げることにつながった。
    ・アクティブラーニングに関して学んだことを、学校全体へ広げていきたいと思う。
    ・生徒が相互に内容を整理する活動を組むことで、授業の理解度が深まっている。
    ・ALの取組は、授業に対する生徒のモチベーションを高めることにつながっている。
    ③ 次年度への提案
    ・今後はALを実施するだけでなく、その効果等の(事後の)の検証が必要。
    ・講演会や先進事例見学等、共同で計画できると良い。
    ・情報を互いに共有し、視野を広げていくことが大切である。「AL型授業だと○○できない(身につかない)」という風潮を打破して、「AL型授業なら○○できる(能力を伸ばせる)」という視点を、さらに多くの先生方へ伝えていく必要がある。
    ・各校が主催する講演に気軽に参加できる体制を整える。

     

     

    溝上のコメント

     

     

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