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(用語集)時間的展望

 時間的展望(time perspective)は、心理学の用語である。それは、「ある与えられた時に存在する個人の心理学的未来及び心理学的過去の見解の総体」(レヴィン, 1979, p.86)と定義されるもので、要は、個人が現在の状況や行動を過去や未来の事象と関連づけて、“今ここ(here and now)”における心理的な意味空間を作り出していることを指す。
 たとえば白井(1997)は、万一のことを考えて生命保険に入ることは、人が時間的展望をもっていることの表れだと見るレヴィン(Lewin, 1948)の例を紹介している。「万一のこと」がカレンダー上で何年先の未来かということは、まったくどうでもいいことである。未来に起こるであろう万一のことを考えていること自体が、今ここにおける心理的な意味空間を作り出しているのである。同様に、同じレヴィンの例からは、ヒトラー政権下で予期せぬ迫害を受けたとき、自殺に走るユダヤ人が多くいたなかで、シオニストたちが高いモラルを維持して組織的で計画的に行動できたのは、何千年もの間逆境に耐えて生きてきたという心理的過去と、励ましを与える未来の目標があったからだということも紹介されている。この例においても、過去に対する心理的解釈と未来へと繋がる目標が、今ここにおける心理的な意味空間を作り出している。
 未来への展望だけが扱われる場合には、「未来展望(future perspective)」と取り出して使用されることも多いが、基本的に時間的展望は、未来への展望だけでなく、過去の事象へも拡げられて、今ここにおける心理的な意味空間を作り出すものである。

 

文献 

Lewin, K. (1948). Resolving social conflicts: Selected papers on group dynamics. Edited by G. W. Lewin, & G. W. Allport. New York: Harper & Brothers.

レヴィン, K. (著) 猪股左登留 (訳) (1979). 社会科学における場の理論(増補版) 誠信書房

白井利明 (1997). 時間的展望の生涯発達心理学 勁草書房

 

 

もっと学びたい人への文献紹介

都筑学・白井利明 (編) (2007). 時間的展望研究ガイドブック ナカニシヤ出版

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