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本レポートでは、「勤勉性」「外向性」「経験への開かれ」の3つのパーソナリティ特性が、学校教育で育てる学習態度や仕事・社会でのパフォーマンスと対応するという理論的仮説を立てて、今後に向けた第1弾の検討を行った。
25~29歳の大卒以上・正規雇用の社会人を対象に調査を行い、勤勉性、外向性、経験への開かれが組織社会化、能力向上、資質・能力にどのように影響を及ぼすかを検討したところ、以下の3点が明らかとなった。
①本レポートで扱ったパーソナリティ特性(勤勉性、外向性、経験への開かれ)すべての組織社会化、能力向上、資質・能力への影響が認められた。
②中でも、経験への開かれの影響がきわめて大きかった。
③モデルとしては、勤勉性が外向性、経験への開かれを媒介して、組織社会化、能力向上、資質・能力へ影響する媒介モデルが採択されたが、パス係数の大きさから、勤勉性、外向性、経験への開かれを並列配置する並列モデルとの実質的な差は十分に認められなかった。
パーソナリティ研究におけるビッグファイブ論から「勤勉性」「外向性」「経験への開かれ」の3つのパーソナリティ特性を取り出し、学校から仕事・社会へのトランジション研究を発展させようと思う。
パーソナリティ特性は、さまざまな研究で用いられているテーマ横断的な心理変数である。本レポートのような現代社会に適応し、学び成長する人の特性を学校・仕事・社会を跨がって用いるのに有用であり、また今後トランジション研究の発展として期待される青年期・成人期・中年期・老年期を跨がって検討するのにも有用であると考えられる。
パーソナリティ5因子特性とは、一般的に「ビッグファイブ(Big Five)」と呼ばれるものである。パーソナリティ表現は、古くオルポートら(Allport & Odbert, 1936)の研究によれば、40万語収録の辞書“New Webster International Dictionary”から17,953語を選ぶことができるとされ、日本では66,000語収録の辞書『明解国語事典』から3,862語を選ぶことができるとされる(青木, 1971)。しかしながら1980年代以降、これらのパーソナリティ表現は大きく5つの基本的特性因子にまとめられるビッグファイブ論が多くの研究者から提示されるようになり(Digman & Takemoto-Chock, 1981; Goldberg, 1981; McCrae & Costa, 1987; Noller, Law, & Comrey, 1987)、今日のパーソナリティ研究の確固たる知見となっている(Goldberg, 1992; John & Srivastava, 1999; McCrae & John, 1992)。
続きは、レポート(PDF)を参照。