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(AL関連の実践)【小学校/社会】話し合いで考えを深めることを目指した授業

青野祐子([京都府] 向日市立向陽小学校)

向日市立向陽小学校のウェブサイト

溝上のコメントは最後にあります

対象授業

 

 

第1節 授業の目標

(1)学習内容についての目標

本単元「水産業のさかんな地域」では、身近な食料であり自然環境を生かして国民の食生活を支えている水産業について学習する。

自然条件を生かした漁業のさかんな地域を事例として取り上げ、それぞれの生産活動を様々なグラフや図、写真資料を通して調べ、水産業に携わる人々の工夫や努力に気付かせたい。 また、世界有数の水産物消費国である日本にとって、水産業はなくてはならない産業である。魚を資源としてとらえ、「とる漁業」だけでなく「つくり育てる漁業」を、守り育てていくものであることにも 気付かせたい。

その導入としての本時は、経験や資料をもとに、水産業が盛んである日本の自然条件に気付き、水産業について学習しようとする意欲を持たせることを目標とする。

(2)アクティブラーニングの視点で

どの教科でも、ペアトークやグループトーク、学び合いは日常的に行っているので、意見を交換したり、話し合ったりすることには意欲的な児童が多い。 今年度は、主に理科や社会科の学習でジグソー法を取り入れてきた。また、社会科では、学習単元のまとめとして、グループでの新聞づくりに取り組むなど、児童が主体的に学び、 自分の考えや意見を伝え合い、そして更に自分の考えを深めていく学習の流れを意識して、授業づくりをしている。

本授業では、全員が同じ資料について考えることで、様々な考えが出て、多くの意見を聞きたいと思わせることができるのではないかと考え、あえて、資料を1つに絞り、 できるだけ教師が出すヒントを少なくして、児童自身がこれまで学習してきたことや、これまでの体験の中で得た知識を総動員させて、互いの関わりの中で考えさせることをねらいとした。

 

 

第2節 授業の流れ(45分)

 
学習活動 主な発問・指示 指導の留意点



普段の食生活を想起
(挙手で意思表示)
  • 「昨日で米作りの学習が終わったんだけど、昨日の夜ごはん、お米食べた人?」
  • 「じゃあおかずは肉だった?魚だった?」
  • 前単元とのつながりを持たせる。
  • 全員が自分のこととして考えられるようにする。
  • 児童の実感を確かめさせる。(若干、肉が多い)

グラフの読み取り
(PP資料)
  • 「グラフを見よう。」
    ①主な国の1人1年当たりの魚と貝の消費量
    ②都道府県別の漁業生産額の割合。

 

  • 日本は世界有数の魚介類消費国であることに気付かせる。
  • 漁業生産額の多さに気付かせる。

めあての確認

  • 「日本で、魚や貝が多くとれるわけを考えよう。」。





日本で、魚が多くとれるわけを予想

 

   (PP資料)
   

 

  • 「まずはノーヒントで考えて、ノートに書いてみよう。」
  •  

  • 「周りが海ばかりのオーストラリアと比べるとどうかな。」
  • 児童の発表から、周りが海ばかりであるという日本の国土の特色を確認させる。

     

  • 海が多いことだけではない日本の海の特色があることに気付かせる。

資料の読み取り、考察
(A4ワークシート1枚)
  • 「資料から分かることをもとに、もう一度、日本で魚が多くとれるわけを考えよう。」
  • 大陸棚について知らせる。
  • ○の大きさが、主な漁港の水揚げ量の大きさであることを確認させる。
  • ノートは閉じて、考えたことを資料のメモ欄にメモさせるようにする。
  • 本時の流れを示し、後で交流をしながら考えを深めていくことを伝える。

ペアでの交流
  • 「自由に動き回ってペアを見つけて、考えたことを友達と交流しよう。」
  • ちがう考えの児童を見付けてメモを増やせるようにする。
  • 書けていない児童は、考えを話したり友達から考えを聞いたりして、何とか書けるようにさせる。
  • 鉛筆は持たせず、話すことに専念するようにさせる。
  • 3人以上の相手と交流するようにさせる。

整理(個別)
  • 「自分の席で、メモを増やそう。」
  • ここで全員、1つはメモがあるようにさせる。





自由グループでの話し合い
  • 「3人以上のグループを作り、資料から考えられることを話し合おう。」
  • まだ話していない児童とも話すようにさせる。
  • 1人の人を作らないように声を掛ける。
  • 自分の気付きと友達の気付きを合わせて、考えを深めるようにさせる。
  • めあてに沿った話し合いになるよう声を掛ける。

整理(個別)
  • 「友達と話し合ったことから、自分の考えをノートにまとめよう。」
  • 話し合ったことを振り返り、新たに気付いたことを加えて、ノートに、自分の言葉で整理させる。
  • めあてに沿ったまとめになるよう声を掛ける。

全体交流
  • 「グループで話し合ったことについて、キーワードを教えてくれるかな。」
  • グループで話し合った内容を簡単に共有させる。




まとめとふり返り
  • 「『日本は~な国だな』という書き方で、感想をまとめてみよう。」
  • 書けた児童から発表させ、共有する。
  • 書くことが苦手な児童がヒントにできるよう、声を掛ける。

 

 

第3節 授業を振り返って

筆者は、本時に限らずどの授業でも、一人残らず全員の児童が「本時のねらい」を理解し、考えようと思うスタート地点に立つことが、全員が参加する授業に不可欠だと考え指導している。 本時では、「導入」や「日本とオーストラリアの比較」によって、考えようとする意欲が高まったと考える。

「資料の読み取り、考察」では、児童が既習事項や体験により得た知識を総動員させて、対話を通じて思考させる事をねらったため、あえて資料を一つにしぼり教師からのヒントも少なくした。 しかし、資料提示の仕方に配慮が不足したため、資料読み取りの段階で躓いてしまい思考につながらなかった児童も見られた。例えば、大型モニターに映し出した海流に関する資料を、 カラー表示した手持ち資料とすることによって、暖流と寒流、そして潮目に、矢印の色や向きで気付き思考を深められた児童が更に多かったかもしれない。

「展開1」で、本時の流れを示し、「自分の考えをメモした後には、意見を交流する中で互いに考えを深めていく」という見通しをもたせた。このことから、自分の考えを言語化する必然性が生まれ、 何とか一つでも意見をもち、メモして伝えようとする意欲につながったと考える。更に、交流する度に新しい発見や考えが広がり、また書く意欲にもつながった。交流の前後には、 静かな教室に鉛筆の音だけが聞こえるという場面があり、その都度ねらいを意識させることにより、全員が本時の学習課題に対して主体的に取り組むことができた。

1回目の「ペア交流」と2回目の「自由グループでの話し合い」では、そのねらいを明確に区別して取り組ませた。1回目の「ペア交流」では、自由に動き回って 「多くの人と考えを交流すること」をねらいとした。児童は「できるだけちがう意見と出会うように」と意識して交流した。その結果、自分の意見をもって交流した児童は、自分以外の人の考えを知り、 新たな発見をしてメモを増やすことができた。また、資料から分かることを自力では書くことができなかった児童が、交流で聞いたことを参考にし、何とか自分の意見を書くことができ、 全員が2回目のグループ交流のスタート地点に立つことができた。

2回目の「自由グループでの話し合い」では、「自分の気付きと友達の気付きを合わせて考えを深めること」をねらいとした。児童は「交流した意見から更に新しい考えを生み出すように」 意識して交流や話し合いに取り組むことができた。その結果、海流を示す矢印の太さに着目したり、太平洋側と日本海側の様子を比べたり、主な漁港の位置や水揚げ高、 とれる魚の種類を比べたりと、指導者が予測していなかったところにまで児童の思考が及んでいた。話し合う中で自分の考えを整理し、活発に話し合うことで議論が深まっていく様子が見られた。 対話的な学びによって思考が深まったと言える。しかし、グループによっては、自分の考えたことを出すだけで停滞してしまったグループもあり、議論が深まったグループの話題を拾い上げて、 全体で共有する必要があった。

 

☆児童の考え(交流後にまとめたノートの記述)

 

授業のまとめとして、グループで話し合った内容のキーワードを発表させた後、指導者がまとめてしまうのではなく、児童一人一人がこの時間に自分自身が学んだことをノートに書かせ発表による 交流をさせたいと考えた。そこで、思考(考えたこと)と感情(感じたこと)を織り交ぜて言葉にさせたいと考え、振り返りの書き方を「日本は~な国だな」と指定したが、次のような記述となり、 交流後に書いた自分の考えとほとんど変わらないものとなった。「感想を書こう」という指示は、児童にとっては書く内容が不明瞭であり、指導者にとっても書かせるねらいが不明確であると考え、 行わないようにしている。児童がもう一歩考えを深めることができる書き方を指示する工夫が必要だと考える。

 

☆児童の振り返り(「日本は~な国だな」)

 

 

第4節 日々の指導が授業に生きる―教科指導と学級経営とのつながり―

授業の主役は、児童である。指導者の説明や発問はできる限り短くし、児童が活発に話し合い、しかも全員が発言するということを理想の授業と考えてきた。しかし、指導者の発問に対して 児童が挙手し発言する形式の授業では、全員が参加できていると確認することは難しく、結果的に話し合いに参加できない児童ができてしまう。なぜなら、ただ聞いているだけでも、何も聞いていなくても、 指名さえされなければ気付かれることなくその1授業時間は過ぎていくからである。また全員が発言するとなると、筆者の経験上では、どうしても最後の数名は指導者から指名することになる。本当は 、自分から能動的に挙手しなければ意味がないが、学習する権利を平等にもつのだから全員を発言させたいという葛藤の中、指名していた。しかし、これでは児童が「主体的」に学んでいるとはいえない。

そこで、ペアやグループでの交流を多く取り入れることにした。交流では、短時間で、多くの児童が一斉に発言できる。しかも具体的に聞いてもらう相手が目の前にいることで、 「主体的」に考えをもち発言できる。これは「対話的」な学びであるともいえる。授業の主役となる児童が「主体的」であろうとするならば、そこには「対話的」である必要があったのだ、と気付かされた。 「対話的」な学びから「主体的」な学びが生まれたともいえる。

学校生活全般においても、主役は児童である。教師は、主役である児童に適切に助言し支援する立場だと考える。簡単に言えば、1日を児童だけで無事に過ごすことができる学級をつくるのが、 教師の仕事であると考える。学級の主体者として児童が育っていれば、朝来てから帰るまで、教師の発する言葉は「どうぞ。」「どうするの。」「だれ。」などのきっかけを与える言葉だけで1日が過ぎていく。 あとは児童が自ら考え、周りを見て声を掛け、周りの人の声を聴き、行動するからである。学級の全員が一人残らず、教室で起こっていることを自分事ととらえられるよう、日々の生活の中で気付かせる声 掛けをしている。例えば、ノートが配りかごに入っているのに気づいた人が配る、水筒を持ち帰り忘れそうだなと思ったらその人に届ける、など何気ないことでも自分が「こうした方がよい」と思ったことを行動に 移すということを大切にしている。それが、「自分で判断し行動する」つまり「主体的」に物事を考える基礎となっていると考える。授業においても、問題を自分事としてとらえ学ぶ児童の姿につながっていると 考える。

また、人それぞれ得意不得意の個性がある一方で、全員が学校生活を楽しく過ごしたい、勉強ができるようになりたいという願いをもっている。他者を理解し、お互いが気持ちよく過ごせるように 行動することを大切にしていることで、授業の中の交流で、話すことが苦手な児童に対して自分から話し掛ける児童の姿や、思考が止まってしまい鉛筆が動いていない児童に「できる?」と声を掛ける 児童の姿につながっていると考える。

小学校は、学級担任制であるので、1日のほとんどを担任と児童が学級で過ごす。従って、担任が何を目指し、何にこだわり、日々何を語るかが、授業にも大きく影響を与える。教科指導と 学級経営とは相互に作用しあって、児童の主体性や学ぶ姿を育てていると考えられる。

 

 

第5節 今後に向けて

学年での教材研究や、校内研究で、「習得させるべき知識はいつ教えるのか」ということがいつも議論になる。知識がなくては話し合いにもならないし深まらないのではないかという意見と、 話し合い深めようとする中で知識が必要となり、児童自らが知識を得ようとするのではないかという意見である。これらの意見はどちらも正しく、教材内容や指導内容、本時のねらいによって組み替えられて いくものと考えている。ただし、対話をさせたり、考えを深めさせたりすることによるメリットの大きさを実感する中、単なる知識を教えることについては少ない時間で指導する方法を考えていきたい。

1学期はこれまで、単元のまとめ学習として新聞を作り学習内容の交流を続けることによって、「最後に新聞にするならどの話題を選ぶか」などと考えながら、「早く新聞を書きたい」と意欲的に学習に取り組む ようになってきた。

特に力を入れて話し合いに時間を取る単元はどれかを考えるとともに、どの単元でも必要となる「深める」学習活動について研究し、年間を通して大きな目でカリキュラムマネジメントしていくことが 必要であると考えている。

 

 

溝上のコメント

 

 

プロファイル

青野祐子(あおの ゆうこ)@(京都府)向日市立向陽小学校(社会科)


  • 一言:「わかった!」「できた!」の喜びを、どの子にももってもらいたいと願い、「どの子も分かる授業」を目指しています。できる限り授業を受ける児童の目線で、指導計画や学習活動を考えるのですが、うまくいかずに悩む日々です。これからも教材研究と実践を重ねて行きたいと思います。

 

 

 

 

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