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本校では、平成28年度からアクティブラーニング型授業の推進を図るべく、各教科より1名を選出し「アクティブラーニング研究会」を発足し研究を進めている。私は初年度より研究メンバーとして参加し、 各地で行われる研修会への参加や、校内における研究授業の実施などを通し研究を進め、授業改善を行っている。
授業実践を重ねていく中で、取り入れる頻度が増したグループワークでは、自己の考えを表現することが得意な生徒を中心とした活動になっていることが気になり、全員が主体的に参加するためのスキルを身に付けさせる必要を感じた。 そこで今年度は「ファシリテーション能力の育成」に力を入れることを決めた。
具体的には、静岡大学の「ファシリテーション講座」と連携し、学生に実際のグループワークに参加してもらうなどし、生徒のファシリテーション能力を高めることを心掛けたところ、その後のグループワークでは明らかな成長が見られた(図表1)。自己の考えを表現することはもちろんであるが、他者の考えを引き出す力を身につけることができ、グループワーク全体のレベルアップにつながったと考える。
清水港周辺の海洋文化の拠点づくりにおける清水港周辺のブランド力の向上等を、アクティブラーニング型の授業展開で考える。地域に目を向けさせる中で、地元清水には観光資源が多く存在していることを理解し、 清水港周辺の海洋文化の拠点づくりへの関心ある態度を育成することを目標とした。
アクティブラーニングにおける授業設計を考える際には、静岡県教育委員会が発行している「アクティブ・ラーニング、課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」(静岡県総合教育センターホームページよりダウンロード可能)を基に 授業展開を構成することを実践している(図表2)。
このリーフレットは、次期学習指導要領改訂に向けて提起された「アクティブ・ラーニング」及び「カリキュラム・マネジメント」について、静岡県総合教育センターの研究成果を学校現場に広く浸透させていくために全県内教職員に 配布されたものである。
私はアクティブラーニングにおける学びの過程を実現するためには「解決したい課題や問い」「考えるための材料」「対話と思考」「学習の成果」を意識し工夫する中で、授業設計をしている。その際に私は、下記にある学びのデザインシートを基に授業案を考えるようにしている。本校独自の学びのデザインシートもあり、校内公開授業の際には、本校職員が積極的に活用している(図表3)。
アクティブラーニングを中心に考えた際には以下のことに注意をして授業構成している。
(1) 話し合いをする際の距離感、雰囲気
グループワークを円滑にするための適切な人数があるように、話し合いを促進する適切な相手との距離感が存在すると考えている。そのため、座ったままではなく、立ってグループワークを行うよう指導をしている。 繰り返し行ううち、生徒が自主的に立ってグループワークを進める姿が授業中に見られる(図表5)。
(2) 考えるための材料をしっかり用意する
グループワークの質を上げるには、生徒に「考えるための材料」をしっかり提供しなくてはならない。「考えるための材料」を提供していないグループワークは、漠然としたものとなり、学習根拠に基づいた「深い学び」にならない。
(3) タイムマネジメント
グループワークをしていると、つい時間を延長したくなりがちである。考えを絞り出すためにも時間を「○分」と決めたら、その時間の中で答えを導き出す習慣をつける必要がある。本校では、時間を大きく表示することを実践している(図表6)。
(4) 約束事を決めて、しっかり守らせる
本校では、1年生の各ホームルームに「協働(ペアワーク、グループワーク)の原則」を掲示し、学校全体で原則を共有している(図表8)。
さらに本授業では、高大連携授業を行った際に生徒たちが「グループワークが活性化するためには」という問いに対して「相手の意見に耳を傾けること、笑顔で接すること、大きな声で接すること」という答えを導き出し、 それをこの授業の約束事としてグループワークの際に大切にしている。
本時までに、「考えるための材料」として静岡市第3次総合計画及び清水区観光資源についての資料のまとめ、静岡市観光企画課による講演等3時間の学習を終了した。 4時間目の本時は班ごとまとめを行い、次回5時間目は各班の発表・まとめを行う。
(1) 導入(5分)
多くの教師が参観予定だったため、生徒の緊張をほぐそうと、ウォーミングアップを取り入れた。「曲田(私)のお疲れさま会を今度の日曜日に企画しよう」という題で、 相手のアイデアに「いいねー」で返して、新たな提案をしていくというペアワークを行った。
A「今度の日曜日に野球部員を呼んでやろうよ」
B「いいねー。それじゃ野球部員に出し物をしてもらおうよ」
A「いいねー。その出し物は、劇をやろうよ」
B「いいねー。それじゃあ・・・・」
というように、3分間続けた。お互いのアイデアを肯定し続け話が進むため、意見を言い合う授業への意欲を高めることが期待できる。
本時の授業は、話し合いがしやすい雰囲気を作るよう、広いメディアセンター(図書室)を使用し、グループワークの際には音楽をかけて行った(図表10)。
(2) 展開1(18分)
・解決したい課題や問い1
「他県の人にアピールしたい「静岡市」の魅力ってなんだろう」
グループ内でファシリテーターを選び、限られた時間内を有効に使う方法を考え、KJ法、ブレインストーミングの手法を用いてまとめた(図表11)。時間の3分の2経過後に、「見回りタイム」を設定し、 各グループのまとめを共有した。生徒は自発的にふせんを持ちながら回っている様子が見られた(図表12)。
(3) 展開2(20分)
・解決したい課題や問い2
「日本中から訪れてみたくなる「清水港周辺」のまちづくりを考えてみよう」
展開1の内容を意識して、グループとしての結論をまとめる学びに入った。最後に一班だけ発表があることを伝え、生徒の意欲関心を高めた(図表13)。
(4) まとめ(7分)
抽選した一班に質問時間も設けて発表させた。発表後、振り返りシートを記入し自己の考えをまとめさせる、という予定であったが、当日は時間が足りなくなってしまった。そのため数名の生徒を指名し、振り返りを全体でおこなった。この時間で感じたことを内化→外化→内化のサイクルの中で、 最後の内化をし、自分自身が共有する外化の作業を通して感じたこと、考えたこと、することを振り返ることで授業の総括とした(図表14)。
図表14 プレゼン者は生徒からの質問にも答える
指導と評価の一体化が求められる中で、グループワークをどのように「評価」するか、ということが大きな課題であると考えている。本時では評価のポイントをホワイトボードに記入し、明確に生徒に示すことを心がけた(図表15)。評価の方法については今後ルーブリックを設定するなど、工夫したい。
また、生徒のグループワークスキルをより高めていくことも今後の課題である。アクティブラーニングを「深い学び」につなげるために、生徒のファシリテーション能力を向上させるプログラムを継続的に考えていく必要がある。
アクティブラーニング研究会で勉強し、様々な貴重な経験をさせていただいていると思う。アクティブラーニングを中心に考えた授業実践を行っているうちに、HRや部活動での生徒への接し方、 運営方法、指導方法が変化してきていることを感じている。生徒の主体性、協働する力を育成するうえでも今後も更に研修を積んでいきたい。
曲田雄三(きょくた ゆうぞう)@静岡市立清水桜が丘高等学校(商業科)