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工藤貴子(大妻嵐山高等学校)
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本授業は、教科書より“Letters from the Battlefield”を利用した生徒が主体的に考える授業を目標とした。パート1から生徒は、栗林中将を中心とする兵士たちが手紙を通じて硫黄島での戦いでどのような生活を送ってきたのか学んできた。
本授業では、ジグソーリーディングを導入し、エキスパートパート活動を通じ“Do you agree with Kuribayashi’s decision?”という大問を生徒は考え、プレゼンテーションを行う。彼の決意とは、様々な視点から解釈ができるが、多くの生徒は「家族を本土へ残し、硫黄島の戦いを彼の部下と遂行した」ということが考えられる。
授業は約1か月間、Lesson 7 “Letters from the Battlefield”の本文理解を行った。これらの内容を軸に本授業は2時間使用し、ジグソー活動を行った。
(1) 1時間目
① Review教科書で学習したものをクイズ方式にし、内容の確認をする。今回は主に、栗林の硫黄島での戦いにおいて、彼の決意や使命を中心に復習をした。
② Pre-writing task“Do you agree with Kuribayashi’s decision?”
教科書で学んできたことを基に、生徒は栗林の使命や彼の決断を考慮し、英語でライティングをする。(WORKSHEET 1 (大きく))
生徒はそれぞれA,B,Cの文を受け取る。各文章を読み、それぞれの問いに解答をする。
④Expert activities
エキスパート班に分かれ、それぞれ理解したこと、また理解できなかった点を確認し合う。エキスパート活動は日本語で行うことを可としているが、必ずメモは英語でとるようにと生徒へ徹底させた。
(2) 2時間目
①Review1時間目で行ったことの確認。また、本時の活動についての説明。
②Jigsaw activitiesエキスパート班では、同じ文を読み合った生徒同士がそれぞれのグループへ分かれる。各グループ3人に分けられていて、A、B、Cを読んだ生徒が集まっている。それぞれのグループへ行き、 各パートの情報交換を日本語で行う。必ずメモは英語でとるように指示をする。
新たなワークシートを使い、Aの栗林中将の使命とBの栗林中将の家族への思いを比べて気づいたことを書く。またB栗林中将の家族への思いとC兵士たちの家族への思いを比較させた上で本時の授業の問い”Do you agree with Kuribayashi’s decision?”についてグループの意見をまとめる。
ここで生徒に気づいてほしかった点は、栗林中将の職務遂行への使命感(A)と栗林中将の家族への思い(B)には矛盾があるということだ。彼自身も硫黄島の戦いに多くのジレンマを抱えていた。また、栗林中将の家族への思い(B)と兵士たちの家族への思い(C)は、共通点が多くある。家族を元気づける内容や心配をかけないような内容、また大きな後悔をつづったものもある。
これらの点を生徒は考えながら最後の問いを考える。
③Cross talk
7班あるうち4班に発表をしてもらう。賛成意見がある中、反対意見を出したグループもあり、それぞれの理由も似ている点もあれば、新たな発想を入れてきたグループもいた。
④Wrap up
日本語で、この章を通じて考えてほしかったことは「なぜ」戦争をしてはいけないのか生徒自身が考えていかなくてはいけないということであると説明した。そのために歴史を学ぶことの大切さを伝え、授業を終えた。
授業を行う上で5つのことを必ず心がけている。本授業を展開するためだけでなく、日ごろからこのような点に注意している。
(1) 社会との繋がりを持たせ、考える機会を作る
なぜこの章を学んでいるのか決して他人事にならないようにする。特に今回は、第二次世界大戦時のことを取り扱ったため、表現などに気を付けながら授業展開をした。”What do you know about WW2?”などの質問をし、日本史や世界史で学んだことを生徒に聞くなどをし、「なぜ戦争をしてはいけないのか」を間接的に問いかけていった。
平成が終わろうとしている中、平成は「戦争のない」時代と語り継がれるだろう。しかし、日本を出てみると、「戦争のない」時代とはかけ離れている国がある。現社会で起きていることは、必ず歴史と結びついていることを理解したうえで、「なぜ戦争をしてはいけないのか」という大きな問いを生徒一人ひとりに考えさせるように努めた。
(2) 学んだことのアウトプットを怠らせない
必ずパートごとにサマリーやリテイリングを行い、教科書の表現を実際に使い学んだことを表現させる時間を設けている。高校2年生になり、これらの活動を約一年間ほぼ毎日行っているが、英語を聞いたり、読んだりしながら、英語でメモを取る力や話す力がついた。実際に今回の授業においても全てディスカッションは日本語で行ったが、メモは全員英語でとれていた。本授業は、最後に英語でのプレゼンテーションを行い、各グループの意見を交換した。
(3) ICTのフル活用
本校ではICTが揃っている。電子黒板だけでなく、生徒は一人一台I Padを所持しているため、ICTをフルに活用することができる。歌詞カードや図などを送ることや、アウトプット活動で行ったサマリーなどは写真を撮らせ、ロイロノートで送る。ロイロノートに送られたサマリーはフィードバックが行いやすい。
(4) 英語の雰囲気作り
英語の雰囲気作りとして、必ず歌を歌っている。生徒のリクエストを毎回募集し、選曲している。基本的に、毎時間小テストを行うが、小テストのない日などは、授業が始まる前に歌を流すことで雰囲気を和らげることができる。また、歌を歌った後は、英語を音読する声も大きくなる。
(5) 生徒と共に学ぶ
今の女子高生がどのようなものに興味持っていたり、どのような言葉を使うのか常に気にかけたり、聞いたりする。それらを行うことにより、ひょっとした瞬間に彼女たちの興味のある方向へと英語で誘導をすることができる。1のところで述べた「社会との繋がりを持たせ、考える機会を作る」ということを行う際、彼女たちの興味や経験を結びつけると、より活動を行いやすくなる。私自身が授業外でアクティブラーナーになることも大切な要素だ。これらがうまくいった時、生徒の活動の仕方はとてもアクティブになる。
これらの5つの事柄を心がけていることで、日々の授業+発展的な活動を行うことができる。毎日の授業でジグソーリーディングだけを行うことは不可能である。そのため、日々の授業から発展的な活動を行う際にどのような指導をしていくか考えることができる。
(1) 目標の明確な提示
1つ1つの活動を行う上で、なぜこの活動を行うのかを生徒に提示しなければ、行っただけになってしまう。生徒には、短く簡単にでも活動目標の提示を行う。
(2) TOO MUCHにしすぎない
「あれもこれも」ではなく、その単元で生徒に理解してもらいたいこと、習得してもらいたいことは多くても2つにする。
(3) フィードバック
サマリーやフリートピックでライティングを行う際に、フィードバックを行っているがルーブリックなどを使うことが必要なときがある。簡易的なものでもルーブリックを作成していきたい。
・今回の公開授業を終えて
今回、初めてジグソーリーディングを活用した授業展開を行った。生徒にとっては、教科書で学んだものだけでなく、新しく得る情報も多かったため難易度は高いものだった。実際にどこまで生徒は自分たちの力で行えるのかとても不安ではあったが、ディスカッションを日本語で行い、メモを英語でとらせたことにより、授業展開が滞りなくいった。この授業をやり遂げられたのは、母語で理解度を深めたことが大きな要因だと考える。母語と英語を使うバランスや生徒の理解度、能力を判断し、より生徒が主体的になれる授業展開を今後も志していきたい。
工藤貴子(くどう たかこ)@大妻嵐山高等学校(英語科)