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(AL関連の実践)【高校/国語】定番教材『富嶽百景』を用いたAL型授業の試み

筒井和樹(大阪府立岸和田高等学校)

大阪府立岸和田高等学校のウェブサイト

溝上のコメントは最後にあります。

対象授業

 

 

第1節 授業の目標

『富嶽百景』は、古くから高等学校の国語教科書に収録されている定番教材である。今回は、書かれた当時の作者太宰治の手記や、周囲の人びとの太宰や執筆前後に関する記述資料などをもとに、太宰が自身の経験をどのように物語化しているかを考えさせた。この活動を通して、事実をもとに創作する方法について学び、作者の創作意図、作品の主題を探らせることを目標とした。

 

 

第2節 本時に至るまでの主な学習の流れ

本単元の単元計画は図表1の通りである。

 


図表1 本単元の指導計画 大きく

 

第1時~第13時までは、時間をかけて物語の読解を行った。第14時、第15時において、物語内での展開と太宰が実際に経験したことと比較出来るよう、特に、作者が登場人物や舞台設定をどのように動かそうとしているのか、それにより何を表現しようとしているのかに着目させた。第12時の終わりに、第14・15時で扱う資料を配布し、読んでくることを課題とした。(資料はこちら)第13時の後半で5人1組のグループを組ませた。その後、分析する資料の割り振りをグループ内で決めさせ、第14時までの課題とした。その後、物語の創作を行わせた。

 

 

第3節 本時の目標と授業の流れ

(1) 本時の目標

(「C読むこと」(1)エ)

 

(2) 授業の流れ

本授業ではジグソー法を利用するために、座席を指定してグループ分けを行った。それぞれのグループは、第14時の時点で同じ資料を扱うことになった生徒同士で構成した。本時での分析をもとに、第15時でまとめを行わせる。

①導入(5分)


図表2 個人活動の様子と生徒の作品例

 

②展開①(15分)

 

図表3 グループ共有の様子

 

※指導上の留意点

 

③展開②(15分)

※指導上の留意点

 

図表4 全体共有の様子

 

④展開③(10分)

※指導上の留意点

 

⑤次時

 

(3) 指導のねらい

①②前時に、一週間を振り返り、その出来事をもとに物語を創作する活動を行っている。日常という日々流れる時間の中からいかに出来事を切り取り創作するかを考えることを通して、生徒が物語を創作することの楽しさと難しさを実感すること、太宰の工夫に着目させるための関心を高めることをねらいとした。

③   自身の活動をもとにキーワードにさせ、全体で共有することで、物語を分析するうえでの共通の用語を作り、『富嶽百景』における作者の工夫にもその用語を使って説明させることがねらいである。

④  太宰が実際に起こった出来事をどのように加工して物語を創作しているのかを、本文と資料を比べて読みながら探っていくことが本活動のねらいである。

⑤  第14、15時の二つの活動を通して、書き手の立場から物語を読み、作者の創作意図、作品の主題を探らせることをねらいとした。

 

 

第4節 本時の目標と授業の流れ

(1) 授業の工夫

①太宰に関する資料を複数用意し、それらと物語内で描かれている出来事などを比較させて、太宰がどのように実際の出来事を物語化しているか、そのねらいは何かを探らせた。

②その際、複数の資料それぞれで分析が必要なため、知識構成型のジグソー法を用いた。グループは、本文の分析2人(①登場人物の人物造型、②私の心情の変化)、資料の分析3人(③井伏氏の人物造型と、旅に来るまでの様子について書かれたもの、④母堂と見合い相手の娘さんについて書かれたもの、⑤おかみさんと茶店の娘さんについて書かれたもの)の5人1グループを8班作成した。

③資料を分析する際、議論が本文とかけ離れたものとならないよう、本文に戻って結果をまとめるよう指示した。

④作者の工夫に着目させるために、「この一週間の自分に何かが宿り、そのものに動かされていたとしたら自分には何が宿っていただろうか。それをもとに『ちいさな○○』というタイトルで物語を創作せよ。」という課題を与えた。

 

(2) 授業の課題

①資料を分析するための十分な時間を授業内で設けることができなかったことが課題である。他者と共有し、「深い学び」を促すためにも、一人で思考する時間を担保することが課題である。一斉指導とペア・グループ学習の時間の配分を検討する必要がある。

②今回は作者の創作意図を探るために、物語の創作を生徒に行わせた。(図表2右上、左下、右下)その結果、作り手の立場から物語を分析しようとする様子を看取することはできた。しかし、キーワードとして教室全体で共有し、個人での作業に活用させるまでには至らなかった。個→グループ→全体→個の流れが活きるよう精査したい。
 また、今回は読むことに重点を置いて活動を行った。その結果、作った物語を交流する時間を十分に確保することが出来なかった。物語を創作すること自体は書くことの領域にも関わってくるので、書くことの活動にも活かすことが出来ないか検討したい。

③ 全体での共有の際、図表4のようにホワイトボードを壁面に並べて掲示した。しかし、実際には写真のように小さな文字のものは遠くから見にくい。講評の中で溝上先生からもご指導をいただいたが、共有の仕方にもう一つ工夫が必要であった。

 

 

溝上のコメント

 

 

プロファイル

筒井和樹(つつい かずき)@大阪府立岸和田高等学校(国語)


  • 一言:作品との出会いや他者との対話を大切にしながら、学んだことが日々のどこかで活きる授業であるよう日々模索しています。言葉の豊かさ・多様性を楽しみながら言語生活を送る人に育ってほしいと願っています。

 

 

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