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大阪府立岸和田高等学校のウェブサイト
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本校に在籍する生徒は、中学校までの数学の内容で全く分からず授業についていけなかったということはないが、高校になった途端に習熟度の差が大きくなり、授業について来られなくなる生徒も出てくる。そのような生徒の多くは、授業を受け身で聞いており、思考が停止している状態になっているのではないかと考えられる。その原因を作っているのは、教師が説明し、生徒が問題を解くといった授業展開の中で、大事な点はすべて教師が説明してしまうことによって、理解につなげるための考える機会を生徒に与えていない可能性があると考える。また、一人で課題に立ち向かって深く考えていくことができない生徒も多い。そこで、公式の成り立ちを生徒たちで考えさせることはできないか、問題演習も生徒たちだけで解決までたどり着かせられないか、と生徒の取り組みを重視した授業展開にするために「主体的に学ぶ」をテーマとし、ペアワークでの授業形態を採用して、今ある知識からこれから学ぶ内容を生徒たちで導き出させることを目標としている。そのようにして、説明をされるのを待っている生徒や、解法の丸覚えをするといった生徒を「主体的に学ぶ」姿勢へと変えていきたい。
単元の中では内容の流れやつながりがあるので、同じ単元内では前回までの授業がその日の授業につながっている。新しい内容を学習する授業では、「教師による導入」から「生徒による導出」、そして「問題演習」の授業展開をベースとしている。「教師による導入」では、生徒が今持っている知識を確認させる。生徒たちで考えていく材料を準備したうえで、その日のテーマとなる目標をペアワークの形態で問いかけによって生徒たちに考えさせる。公式や性質などは生徒たちによって導き出させることを大事にしている。そして「問題演習」へと移り、最後にその日のまとめをさせる。その授業で、「何を理解して、何が出来るようになったか」が生徒たちで整理されていることが望ましい。
時間 | 指導内容 | 学習活動 |
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導入 15分 |
直線lを求めよ。また、直線lは直線y=xをどのように平行移動したものか複数通りで考えよう。
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導出 12分 |
≪ペアワーク3分≫
放物線Cの2次関数を求めよ。また、軸と頂点も求めよ。(3問)
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問題演習 6分 |
教科書p.65 問9(2) 教科書p.66 問10(2) |
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整理 13分 |
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3分 |
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(1) 知識の確認(教師による導入)
「平行移動とは」について生徒同士で確認させ、平行移動後の直線の方程式からx軸方向とy軸方向の2種類の見方ができることを生徒に発見させることを導入として行なった。この時点でも知っている直線の方程式で考えることによって、平行移動後に方程式がどのように変化しているかを考察することができた。
(2) 生徒による導出
ペアでの学習活動で平行移動後の2次関数のグラフから方程式を推測させたが、直線の方程式での考え方を導入で扱ったおかげでスムーズに生徒たちだけで導き出すことができたように思う。しかし、2次関数の平行移動についてのまとめも生徒の発言から丁寧に行いたかったので、生徒同士で意見を出し合って考える時間をもう少し確保した方が良かった。
(3) 時間配分
今回50分の授業の中で、2次関数の平行移動を導き出させて一般的なグラフの平行移動についてまとめをする計画を立てたが、生徒同士で考えさせたり問題演習をさせる時間が十分に確保できなくなるので一般的な平行移動の内容に触れずに終わった。授業の中で理解がつながっていくよう組み立てを重視した内容にしたが、生徒の主体的な学びに重点を置くならば内容をもう少し絞り、生徒同士で考えた意見を話し合う時間や発表する時間をゆっくり取る計画にすべきだった。
(1) つながりを意識させる導入
学習活動の中で、生徒たちで導き出せる授業計画となるように、今ある知識の中でどの知識を確認させることによって、その日のテーマにつなげていくのかを考えることを大切にしている。その日の学習のテーマ設定が大事になり、こちらが生徒にどのような力をつけさせたいかをはっきりさせておかないといけない。
(2) 生徒の考えに柔軟に対応出来る準備
生徒に導き出させる過程で、様々な意見が出るケースもある。生徒の意見を大事にして授業を展開できるように、教材研究の段階で複数の展開を考えるようにしている。また、生徒の誤った考え方に対しても、どこが誤りなのかを他の生徒に紹介するなど、様々な意見を生徒たちで共有する時間もとる。
(3) 難易度の設定
知識を確認するだけで導き出せるものもあれば、こちらから誘導をいくつか用意して導き出せるものもある。扱うテーマの難易度だけでなく、生徒への発問の難易度を変えたりすることで、生徒が考えて導出できるように難易度設定をしている。それによって、どのような内容でも生徒たちだけで考えて導き出すような主体的な学びが実践できている。
ペアワークによる授業を昨年の2学期より授業に取り入れるようになった。そこから、ペアワークの利点を活かすために生徒主体の授業展開ができないかを模索する中で、現在のスタイルにたどり着いた。受身的に授業に参加する生徒は少なく、積極的に参加している。また協働の中で、自分の考えを伝え相手の考えを聞いて何とか結論を導き出そうとする姿勢になっている。今後の課題として、
(1) 板書を最小限にする
50分の授業の中で、板書を取る時間が多くなっているので、生徒に考えさせる時間を多く取るために板書の量を減らす。
(2) 生徒にまとめをさせる
1つの授業でテーマを決めているが、どうしても生徒の反応によって進度が左右されるため、まとめまでたどり着かないことがある。生徒たちでまとめをして整理させるよう授業展開を工夫する。
(3) 個-協働-個の学習過程を考える
「対話的で深い学び」となるような授業展開も考える。この授業実践例のような教科書の内容を進めていく授業とは別に、問題演習中心の授業で個人ワークをしてからグループワークを取り入れ、生徒同士での議論を発表し、その後の考察なども生徒だけで展開していける授業をデザインしていく。
伊藤功士(いとう こうじ)@大阪府立岸和田高等学校(数学)