このページは、溝上の学術的な論考サイトです。考えサイトポリシーをご了解の上お読みください。        溝上慎一のホームページ

 

(AL関連の実践)【小学校/理科】学び手としての子どもを育てる = アクティブラーニング

安立和人([京都府] 向日市立向陽小学校)

向日市立向陽小学校のウェブサイト

溝上のコメントは最後にあります

対象授業

 

 

第1節 はじめに~目指す子ども像~

どのようなことに出会っても、自分なりの「解き方」をもつこと。自分なりに「気付く」こと。自分なりの「感じ方」をもつこと。自分なりに「思いを広げる」こと。を常に意識して授業をしている。

(1) 一人一人の気付き・考え・判断・疑問などをあらゆる場面で問う

筆者は、「話したいことが自ら自然に出てくるような授業」をつくり出していきたいと考えている。しかし、一方では「自分の気付きや感じ方、思いを話さざるを得ない状況」をつくる必要もあるとも感じている。常に気づくことのできる子どもに育てるために、常に考えようとする子どもに育てるために、「何に気付いたの?」「その意見について、どう思う?」など、学ぶ主体はあなたなのだ、ということを常に問いかけてきた。

(2) 書くことを通し、気付く力・考えを深める力・じっくり取り組む力を育てる

日常生活の中、教科学習の中などで様々なことに目を向けさせ、書く機会をできるだけ多くもつようにしている。書いてまとめる場・書いて自分の考えを深める場・書いて学習をふり返る場など、書く機会を意図的に設定し、書くことを厭わない子に育てることを重視している。

(3) 聞く力を重視する

「確かに聞き取る力」を養わせたい。それは話し合う力を育てる前に重要なことと考えるからだ。「今〇〇さんが話したことを繰り返し言ってみよう」「〇〇君が言ったことについて、君はどう思う?」と問うことから始めた。

(4) 教える→身に付ける

教えようとしても教えられるものではない。これを前提に日々授業を行っている。例えば理科「水溶液の性質」で、青のリトマス紙が赤くなったら酸性。ということを教えるのは簡単である。だが、これで子どもたちが分かったのかと問われれば、分かったことにはならないと思う。酸性という大きなくくりの水溶液について、いろいろな方法で試し、共通性を見出し、自ら試してみることによって、実感・体得して「身に付いた」知識となる。

*参考文献:高田裕志(元舞鶴市立中舞鶴小学校)『「学ぶ力」を育てる読み取りの指導』(2017年)

 

 

第2節 単元設定について

授業の中で、子どもたちが自ら「分かる」授業になるように単元の流れを工夫している。今回の「てこのはたらき」では、(おもりの重さ)×(支点からの距離)を子どもに分からせるために、3時間をかけた。第1時から授業を進めていくにつれ、子どもが少しずつ気付いていくような単元構想になっている。だから、教師は第4時になってようやく(おもりの重さ)×(支点からの距離)を黒板に板書しまとめる。それまでは、教師はまとめない。子どもたちには、分かったこと、気付いたこと、思ったこと、分からないこと、疑問に思ったことなどをまとめさせる。

本単元では、棒を傾けようとする働きが、(支点からの距離)×(力の大きさ)で表され、これが棒の両側で等しいときにつり合うことをとらえられるようにする。第1時では、モビールを作る体験を通し、棒を傾けようとする働きが力の強さだけでなく支点からの距離にもよること、つり合わせるには、力の大きさに応じて支点からの距離を調節する必要があることに気付くことができるようにしている。

第2~4時においては、てこがつり合うための規則性を発見できるよう、段階を追った課題を用意した。第5時では、得られた知識を活用して「問題を作る」活動を行わせ、問題を互いに出し合うことによって、知識がより確かに理解されるよう配慮している。

第7時から、身の回りの道具を調べ、第6時までに得た知識を活用してそのはたらきを説明する活動を設定している。

このように本単元は、体験と追究、その結果得られた知識を活用したレポート作成の3段階で構成し、論理的に考える力と活用する力の伸長を目指した構成としている。

 

  

 

 

第3節 本時の目標

実験結果から考察し、てこの規則性を見出し、自分の考えを表現している。(科学的な思考・表現)

 

 

第4節 本時の授業の流れ

 

  

 

 

第5節 授業をふり返って

(1) 全体を通して

45分のほとんどを子どもたちで話をつなげ、考えを深めていけるようになったと感じた。その中で、友達の話に耳や心(体)を傾けしっかり聞くことができる。聞く力が付いてきたことを実感した。また、話し手は友達の反応を見てくり返したり、より伝わるように言い換えたりして相手に伝えようとする姿も見られた。

話すことについて、私は「正解か間違いかではなく、まずは自分の考えや思いを大切にしたい」と子どもたちに語っている。そのため、『間違った意見』でも堂々と言うことができ間違っても良い雰囲気を作り出せていると思う。そして、どんな意見も臆することなく言えることこそ、子どもたちが主体的に、また、対話的な学びの第一歩であると考えている。

【展開】問い①では、前回つり合った状態から、左右におもりを1個ずつつけ足すとどうなるかを考えた。子どもたちは、中心からおもりが付いているところまでの距離とおもりいくつ分かをたす考え方(たし算方式)や、中心からおもりまでの距離におもりの重さをかける考え方(かけ算方式)が出てきた。また、計算ではない考え方も出た。「もともとつり合っていたのだからそれは考えず、付け足したおもりだけを考えると、左側は中心から2つめのところ、右側は中心から3つ目のところに1個ずつ付けるから、右に傾くのでは・・・」という意見など多様だった。いくつかの意見の中で子どもたちは、たし算の考え方では説明ができなくなることに気付いていった。ただ、全ての子どもが気付いたかというとそうではない。友達の意見を聞いても理解できない子もいる。そのため、その子達に対する手立てとして、さらに分かりやすく説明する時間も必要であった。

授業後の児童のふり返りでは、「今日の授業からどんなことが言えるか。」「何に気付いたか。」「これまでの学習をつなげて分かってきたことはないか。」など、総合的に書ける子どもが多かった。これも、日頃から書く活動に力を入れていることが生かされているように感じた。

授業のまとめとして、グループで話し合った内容のキーワードを発表させた後、指導者がまとめてしまうのではなく、児童一人一人がこの時間に自分自身が学んだことをノートに書かせた。そして、そこで子どもたち一人一人の理解を確認し、理解できていない子どもには、次の時間で問い②を考えさせ、かけ算の考えだとどの問題も解くことができることに気付かせていく手立てを取った。

(2) 成果と課題

 ○子どもたちが45分間の授業を進めていく力が付いてきた。
 ○子ども達が発言を付け足したり、つなげたりできるようになった。また、それらの発言から深めようとする子も現れてきた。
 △今回の授業では、教師が「たし算方式」か「かけ算方式」かについて執着しすぎた。第3時ということもあり(おもりの重さ×支点からの距離の学習をする最後の時間)計算でどちらが傾くかを子どもたちに答えさせようとしてしまった。今回、実験結果から分かったこと、思ったことなどを書かせると、きっと『たし算ではない』ことに気付くはずである。そのため「たし算方式かかけ算方式がどっちだろう?」という発問は不要だったと思う。

 

 

第6節 最後に

知識として子どもたちに教えなければいけないことがある。例えば、今回の理科の授業なら、支点・力点・作用点という言葉や概念、(おもりの重さ×支点からの距離)などは知識として子どもたちが身に付けなければいけないことである。その一方で、知識だけでなく鍛えていかなければいけない力がある。友達の話を聞く力、話す力、筋道を立てて説明する力、前時の内容を踏まえて書きまとめる力、問題を自分なりに解決していこうとする力などである。その両方を育てていくことに日々力を注いでいる。

「集団と個」は相互に作用し合うので、担任の力の見せどころ。この言葉は本校の山本岳校長の助言である。集団の力を育てれば育てるほど、その集団の中で『しんどい』と思う子も出てくる可能性がある。集団の力、個の力その両方のバランスを見極めていくことが必要である。

 

 

溝上のコメント

 

 

プロファイル

安立和人(あんりゅう かずと)@(京都府)向日市立向陽小学校
・一言:子どもたちは日に日に、そして着実に育っています。そんな姿を見せられると『こっちも負けられない』と日々精進しています。来年度から学習指導要領が変わります。より柔軟に、より素直に変化を楽しみながら教育課題と向き合っていきたいと思っています。ですが、教育の根幹の部分はぶれずに、「教え」そして「育てて」いけたらと考えています。

 

 

 

 

Page Top