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(AL関連の実践)【中学校/理科】スモールステップカードを用いて基礎・基本から深化させる-子どもとともに成長していく授業実践- 片山大輔([京都府] 南丹市立園部中学校)
南丹市立園部中学校のウェブサイト
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対象授業
- 授業:中学2年生 理科
- 生徒数:31名(男子17名、女子14名)
- 教材:『未来へひろがるサイエンス』(啓林館)
第1節 授業の目標
これまで学んできた単元は、「さまざまな化学変化」である。今回の実験の内容は既習事項ではあるが、「二酸化炭素は燃えない」という子どもたちの認識を覆すところから始め、常識にとらわれないように自由な発想で考えさせたい。この化学変化の内容を応用して、気付きから様々な意見が出させ、学びを深めさせたいと考えている。また実験終了後全体で交流し、仲間と共に考えさせることで化学変化を理解させる。
第2節 授業の流れ(50分)と工夫
(1) 前時の内容の復習(3分)【全体】
- 既習事項の復習については、学習に苦手意識を持つ生徒でも、意欲的に挙手・発言ができるよう、スモールステップカードを使って行う。【全体】
図表1 スモールステップカードを使った復習 図表2 既習事項を挙手して発表している様子
(2) 本時の実験ポイント、注意事項の確認。めあての提示(7分)
- その実験を行う時でも、実験の目的、目標を生徒にわかりやすく伝えるように工夫している。【意図】
- 生徒に理解させるときに意識している点は、「傾聴の姿勢」である。傾聴の姿勢をつくることができれば、より実験における注意事項を理解し、実験を安全かつ迅速に行うことができる。【全体】
図表3 めあての提示 図表4 傾聴の姿勢(共有)
(3) 予想を立て、実験を行う(15分)
- スモールステップカードを使った事により、既習事項の復習を行えているので、予想を立てやすい。【個人】
- 予想を行ってから実験を行うことで、興味・関心が深まり、予想していた結果と違う結果を得ると意欲的に考察を深めようとするのに役立つ【予想→実験→考察】
図表5 予想をしている様子 図表6 実験をしている様子
図表7 理科助手による実験補助の様子
(4) 個人で再考しグループで考察させ、必要に応じて再び実験を行わせる。(15分)
- 個人の考察を、グループに広げることで、視野を広げさせる。【個人→グループ】
- 理科班(1班3~4名×8班編制)にすることで、多角的な視野で考察することができ、学習理解が深まる。【熟考】
図表8 実験結果から考察している様子 図表9 主体的な意見交流の様子
(5) 本時での学びに対する発表および、個人で振り返り(10分)
- ホワイトボードを利用して、班員の意見を見える形で表現させる。【可視化】
- Bluetoothを用いたICTの活用。見やすくわかりやすい発表環境を整える。【ICT活用】
図表10 ホワイトボードの活用 図表11 Bluetoothを用いたICTの活用
第3節 成果
【教科指導】
- スモールステップカードが定着しているので、学力的に課題がある生徒にも挙手をする機会が増え、生徒が参加しやすい環境を作った。
- 今回教科書には、詳しく載っていない内容だけあって、内容を理解するのに苦戦する生徒もいた。今回は思考ツールとしてヒントカードを利用した。できるかぎり、自分たちの力で導き出す(思考力)事に重点を置いた。その生徒に対して、どのような補足をすることが良いのかを考える機会となった。
- 理解が不十分な生徒に対しても、まとめたレポートを返却するときにコメントを書いて返すことで学習支援を行うことができた。
【主体的・対話的で深い学び】
- 理科班(3~4人)を意図的に作ることで、それぞれの得意分野が生かせるように工夫を行った。またルーブリック評価をとり入れて発表させたので役割分担がしっかりできた。
- すべての生徒が傾聴の姿勢で授業に望むことができた。
- Bluetoothを用いたICTの活用をしたことで見やすくわかりやすい環境を整えることができ、積極的に学びに向かう生徒が増えた。
第4節 課題
【教科指導】
- 基礎学力の定着が不十分な生徒には難しい内容だったかもしれなかった。また学習内容が発展的な内容であったので、予想を当てる事が目的になっていた生徒が少なからずいた。この点については、今後改善が必要である。
- 実験のめあてに沿った振り返りが不十分な生徒がいたように思った。振り返りを見ていると、自分の言葉でまとめられていない生徒もいたので、助言が必要だと改めて認識した。
【主体的・対話的で深い学び】
- 実験をする上で、「めあて→目的→予想→実験→結果→考察→グループで交流→発表→振り返り」の流れを日頃から行っていた。しかし個人の考えが集団に伝わっていない不十分なグループがあった。学ばせる必要性をもっと丁寧に伝えることが大切であると考えた。
- 予想と結果が違った場合に、相手にどのように伝えたら分かるかを考えられる集団にすることで学びが深まると考えた。
第5節 研究授業全体の振り返りについて
研究授業を行うに当たって生徒にわかりやすく伝えることの重要性を改めて、感じさせられた。また教科部会を持つことの大切さや、子どもたちと日頃から関わる事の重要性を改めて学ぶ機会となった。
サイバー空間とフィジカル空間を融合させたり、AIが活躍するSociety5.0時代を迎えると言われる一方で生徒の理科離れは進んでいる。そんな中、実験を通して実物に触れ、でた結果をグループで熟考し、学びを深めていくことが大切だと改めて学んだ。そのためにも子どもたちに次の時代を生き抜く力を付けさせられるよう学び続ける姿勢を大切にしたいです。
溝上のコメント
プロファイル
片山 大輔(かたやま だいすけ)@(京都府)南丹市立園部中学校
- 一言:生まれも育ちも南丹市園部町です。地元の子どもたちに理科の楽しさや不思議なところを学ばせる機会をいただけて大変ありがたいです。子どもたちは探究心が旺盛で学びに向かう姿勢が身についてきました。地元の子どもたちを育て、将来、自分の卒業した「あの園部中学校」に誇りを持って生きていけるような生徒を育成していきます。