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(AL関連の実践)【中学高校】 関西学院千里国際中等部・高等部(SIS)の取り組み
-「21世紀型教育の実験校」としてのこれまでと今後-

井藤眞由美(関西学院千里国際中等部・高等部)

(大阪府私立) 関西学院千里国際中等部・高等部のウェブサイト

(溝上のコメントは最後にあります)

第1節 沿革と概要

1991年に「千里国際学園」として開校。2010年に学校法人関西学院と合併し、「関西学院千里国際」と校名を変更。創立時より変わらず「大阪インターナショナルスクール」と合同で学習活動を行っている。

1987年の文部省「新国際学校」構想の下に設立された学校である。新国際学校研究調査会による「新国際学校に関する研究」が1989年に刊行されたが、その中には以下のような表現が使われており、開校時より、参加獲得型授業(今でいうところのアクティブラーニング)を実践してきた。

併設の大阪インターナショナルスクール(OIS)は、WASC(Western Association of Schools and Colleges)と 国際バカロレア(IB)機構に認定を受けており、基本的には外国人を対象にした学校で、 幼稚園から高校三年生まで全ての学年でIB教育を実践している(PYP/MYP/DP)。 インターナショナルスクールであるOISと一条校である本校SISは「Two Schools Together」を合言葉に教育活動を共に行っている。音楽・体育・美術は両方の生徒が一緒に英語で授業を受ける(MYPの体験)。 クラブや学校行事、生徒会活動など、授業外の活動は基本的に全て合同で行う。それらの場面では日本語と英語の両方が使用される。

本校SISは、いわゆる「帰国生徒受け入れ校」であり、現在は全体の約50%が帰国生である。海外で様々な学びのスタイルを経験した生徒が集まっており、本校入学前の学習言語も様々である。英語での学習体験を持つ生徒が一番多いが、フランス語やイタリア語、中国語、スペイン語などでの学習を経て本校に編入学する生徒もいる。

 

 

第2節 26年間のあゆみと現状

少人数で参加獲得型の授業をすることを前提に、教室は24名定員のサイズとなっている。各教科で工夫を凝らした参加獲得型、具体的には、リサーチ・プレゼンテーション・ディスカッション・ディベート・プロジェクトなどを多く取り入れた授業や、実験重視の理科教育などを実践してきた。

併設の大阪インターナショナルスクール(OIS)が創立時から、国際バカロレア(IB)認定校であり、常にIBの学びを側で見て参考にしてきたという面もある(2013年からは、本校に在籍したままOIS生徒ともにIBDPを取得することができる制度も持っている)。

英語は中学では5段階にレベル分けし、海外で英語での学習を経験した生徒で3つのレベルに分かれており、ここでは海外英語圏の学校でのEnglishの授業と同じような形式と内容の授業を提供。日本の小学校から入学した生徒は二つのレベルに分かれ、どちらもタスクベースの授業を提供している。高校では学期ごとに多様な英語の授業を提供し(例:嵐が丘・Poetry・Children's Literature等)どのレベルでも授業言語は英語のみで、英語「を」ではなくと英語「で」学ぶ。英語の授業に関しては、そのスタイルは「日本的英語授業」とは一線を画したものであり、英語に関しては「主体的・対話的で深い学び」を早くから実践していると言えるだろう。

ICTに関しては、当初用いていたのは「コンピューター教育」という表現であったが、1991年の開校時より、コンピューターを授業に取り入れる試みとデジタル社会への対応をしてきた。2012年よりiPadを高校生全員に貸与して授業やその他での活用をしてきたが、2017年よりBYOD、つまり高校生が一人一台、自分のデバイスを学校に持ってくるという体制にした。5年を経て、iPadの機種が古くなってきたこともあり、また、2015年にスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を受けてから高校生が取り組む課題研究の質と幅が以前より深まり、タブレットでは物足りない面が出てきたためである。

 

 

第3節 浮かび上がった課題と2017年度からの動き

このように、創立時から時代に先駆けた国際教育、アクティブラーニングの実践を積んできたつもりではあるが、昨今、三位一体の改革、アクティブラーニング、「主体的・対話的で深い学び」が語られ始め、多くの学校がそれに伴った学校改革を行なっている、その劇的な変化の様子や改革の実践を耳にする中で、本校の課題が浮き彫りになってきた。開校時から最先端の教育を実践してきた・・・?本当に最先端を走ってきたと言えるのか、教科単位や個人での実践を全員で共有して全体の教育力を高める努力をしてこれたのか?パフォーマンス評価など、評価の在り方についての議論は十分にできているだろうか?

これまでの実践を振り返り、現状の課題を明らかにし、本校の教育を強化するための新たな取り組みが必要ではないだろうか。

  1. 2017年度、「カリキュラム・ティーチング・ラーニング委員会」を立ち上げた。完全3学期制で高等部は学期ごとに生徒それぞれが自分の時間割を作成するという「学期完結制」という仕組みを持っているが、2020年実施を目指して、このカリキュラム自体の整理を目指している。また、これまでの互いの実践についての情報と理解を共有し、6年間の学びのシークエンスを作成する計画である。このカリキュラム整備にあたっては、同時にティーチング・ラーニングのコンセプトの共有と強化を図る必要がある。ここにアクティブラーニングやプロジェクトベースの学びの研修を取り入れる計画である。本校のように「以前から取り組んできた」との意識も高く、教科ごとの独自性が強い学校ならではの、より良い研修方法を模索中である。
  2. 授業づくり勉強会:上記の委員会の一部員が、委員会の下部組織として発足。互いの授業を見学し、意見交換をする非公式な勉強会を2017年秋から定期開催の予定。
  3. ETT (Educational Technology Team) :この委員会自体は2011年度に発足した。翌年からのiPad導入に向け、OISのテクノロジー環境の整備(OISの高校生は2012年よりBYOD)と歩調を合わることも目標に始めたものであり、iPadの活用方法の普及やデジタルシチズンシップの浸透に取り組んできた。2017年度、この委員会は第二フェーズを迎えている。第二フェーズの主な取り組みは二点あり、1) BYODの体制で高校生たちがそれぞれに違うデバイスを持っている環境でICTを最大限に活用する方法についてと 2) 高校生に貸与していたiPadを回収したが、これらを整備し、中学生の授業でクラス単位でiPadを使えるようにすることである。二点ともにおいて、ICTを活用したアクティブラーニングの第二ステージへと進むにあたっての校内研修に力を入れたい。

 

 

溝上コメント

 

 

プロファイル

井藤眞由美(いとう まゆみ)@関西学院千里国際中等部・高等部 校長

  • 一言:2000年より英語教員として着任。2009年に教頭に就任後は、ICT環境を進めるための委員会、リテラシー教育を進めるための委員会、SGH申請などに取り組んできましたが、、2016年以降は校長として、全体をまとめることについて考えています。アイディア等交換の機会があれば幸いです。

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