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教育コロナ会議(高等教育)議事録(2020.4.18)

本日の検討議題

①コロナ情勢の今後の見通し
・5/6で緊急事態宣言は解除されない可能性
※(2020年)4/7に7都道府県(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・大阪府・兵庫県・福岡県)に緊急事態宣言が発令
※(2020年)4/16に全都道府県に拡大
・第二波、第三波が予想され、再び緊急事態宣言が発令される可能性
・はやくても夏明けまではこの状態
・おそらく1年は3密回避の制約下での教育推進と考えておいた方がいい
②大学の授業開始は?今の時期は教員・学生にとってどのような位置づけか?
・5月の連休明け、(4月の)週明け、その他
・オンライン授業開始前のハード・ソフトの確認・ウォームアップ期、学生の健康や状況把握、自宅学習の促しなど
③今新入生はどういう状況か?
・オリエンテーション、履修登録は済んでいるか?
・大学と日々繋がる取り組みを行っているか?
④学生に対するオンライン学習環境の支援状況は?
・十分なWiFiやインターネット環境がない学生には?
・スマホはあるが、PC・タブレット等の端末がない学生には?
⑤教員に対する大学の組織的マネジメント
・学長名で方針は示されているが、個々の教員に授業の運用は丸投げ?
・オンライン授業の仕方、教材作成などのガイドラインが提供されているか?
・ハード・ソフト面に関する相談窓口(各種センター、教務部・情報部、 ICT委員など)は設けられているか?

 

 

議論

(お断り)
・学校が特定されてはいけませんので、特定情報は抽象化しているか削除をしています。
・情報を多角的に収集するために、参加者は管理職から一般の教員までさまざまです。会議ではあまり気にせず情報をいただいています。

 

・溝上:5/6で緊急事態宣言が解除されない可能性が高い。1、2週間の延長、はやくても5月末までは延長されるとみておいた方がいいかもしれない。その前提で、現在の教育計画を立て直す必要がある。
・海外のコロナ情勢がずれており影響を受けるので、国内で終息が見えたとしても、第二波、第三波を予想しておく必要がある。もう一、二度、緊急事態宣言が発令されることを想定しておいた方がいいかもしれない。
・いずれにしても、はやくても夏明け、長引けば2020年度の1年は、この状態が続くとみて教育計画を立て直した方がいい。
・参加者A(私大):全国の大学はどの程度現在の状況を認識しているのか。
・溝上:予測は、ある程度どの大学も持っているのではないか。ただしそこから、大学が組織的に対策を打ち出しているかどうかはまた別の問題だ。半年~1年先までコロナ情勢が続くと見通して対策を打ち出している大学は多くないと見える。
・参加者B(国公立):1年の見通しと言っても実際には難しい。また感染者の数(拡大)にかなり差があり、都道府県・各地域によって大学の考え方には相当の温度差(認識差)があるだろう。

 

・溝上:全国的には5月の連休明けから授業を開始する大学が多いようだが、すでに開始している大学もある。
・参加者B(国公立):5/4より授業開始の予定。第1クォーターでは、講義系授業科目をすべてオンラインでライブ配信する。緊急事態宣言の解除時期に関係なく、オンライン授業で対応する運びである。実験・実習等の授業科目は夏期の集中講義で実施予定。
・参加者C(私立):学年歴では4月2週目からオリエンテーション、履修登録を実施する予定であったが、緊急事態宣言の発令を予測して、1週間前倒しで実施した。その結果、オリエンテーション、履修登録を早々と済ませられ、授業を4/21から実施する予定が立てられた。オンライン授業は、非同期型と同期型を組み合わせて実施を準備している段階である。
・参加者I(私立):これまで感染者がいなかったので、危機意識は低かったと言える。通常通り、4/1よりガイダンス開始。4月8日授業開始の予定を4月6日に4月20日開始に変更を告知。
・参加者J(私立):世界的にはオンラインで音楽を教える人も多くいるが、楽器によっては家で音を出せない。合唱・合奏はできない。年配の先生はオンライン授業に否定的。学長からの指示はない。情報教育に強い人が勤務していない。5/7から授業開始とされているが、教員にはこの期間に対する指示がでていない。4月から授業開始前の期間に対して自宅勤務という認識をしていない教員もいる。

 

・溝上:現在(4/18時点)で、教員や学生は何をしているか?
・参加者B(国公立):当初の学年暦では4/6に授業開始予定であったが、5/4に変更されたので、比較的時間が生まれた。そのおかげで教員はオンライン授業の準備を行っている。基本は在宅勤務。
・参加者D(国公立):5/11から授業開始の予定である。学校から組織的にオンライン授業の指示は出ていない。
・参加者E(私立):まず3月時点で4/20まで休講を決定し、緊急事態宣言発令までに4/21より主にオンラインによって授業開始することを発表した。その後、緊急事態宣言の発令を受けて5/6までのキャンパス閉鎖を決定した。大学全体の指揮系統は学長からということで一本化されている。同時に、実験を多く抱える学部や、資格取得のための実習が多数を占める学部、留学生が多く国際的な観点からの取り組みが必要な学部など、学部間の講義体系が大きく異なる。そのため最終的には学部ごとに対応することが求められることから、スピード感やICTへの親和性など、学部によって状況に差が出てくる。
・参加者F(私立):3/10 ごろに卒業式、春の入学式の中止を決定。学長から、3月中旬には6月中旬まではオンライン授業で行うとはやばやと告知。緊急事態宣言の解除は関係なく、しばらくはオンライン授業で行うこととして進行している。 
・参加者G(国公立):学部長と教務委員長連名でアカデミックアドバイザー(1,2年次。1教員で約15名の学生を担当)およびゼミ担当教員に連絡を取るように指示を出した。連絡が取れたか否かについては、アカデミックアドバイザーおよびゼミ担当教員が4/22までに教務企画センターに報告することになっている。
・参加者C(私立):うちの大学も、1教員5~6名の担任制をつくり、学長から学部長、学科長へと縦の指示や連絡を徹底させ、学生とのコンタクト(健康や学習・生活状況など)をチェックしている。

 

・溝上:十分なWiFiやインターネット環境がない学生にどう対応する?自宅にPCやタブレットを持っていないが、スマホは持っていればOKとするか?
・参加者B(国公立):4月上旬に新入生と在学生を対象にICT関係(ネット環境等)の環境調査を実施した。回答率は100%ではないが、1割ほどの学生がオンライン環境が不十分であるという結果を得た。緊急事態宣言発令の前には、ICT環境の弱い学生は大学に来てPCやWiFiを利用するという配慮実施を考えていたが、それは今難しいと判断している。調査に回答していない学生の状況こそケアの対象と考えるべきかもしれない。
 また、同期型のライブ配信によるオンライン授業を視聴できない学生に対して、レコーディングしたものを授業後に学生が教員からの共有で視聴する(オンデマンド型への対応)など工夫する必要があると議論している。この機会に、学生にはPCやWiFiの環境を整備するように強く指導していく方向である。
・参加者G(国公立):クォーター制で連休明けの第1クォーター開始から第2クォーターまではオンライン授業で実施されることがすでに決定されている。よって現在の緊急事態宣言の解除時期は影響しない。調査はいち早く実施し、3%(40人程度)の学生が不十分な状況にあることが判明。そのような学生にはPC、WiFiルーターを貸与できるようにしている。アンケートに回答していない学生がいて、その追跡が必要である。
・参加者I(私立):授業開始延期を受けて、遠隔授業に向けて現場主体で動き始めた。一部の学部はBYODを進めておりノートPCも持たせている。次年度の新入生からは、その他の学部でもノートPCを購入させる予定である。
・参加者I(私立):パソコンは複数画面で資料を閲覧ができるが、スマホでは難しい。プリンタを持っていない学生が多い。スマホのみで資料の閲覧・入力提出は難しいのではないか。自宅WiFiも4-6%は持っていない。現状Wi-Fiルーターは入手が難しく、対象者を誰にすれば良いのか線引きが難しい。文部科学省からの補助金の詳細を待っている。

 

・溝上:オープンキャンパスや入試に関して現状はどうか?
・参加者B(国公立):議論はまだ出ていないようである。
・参加者F(私立):夏にはオープンキャンパスを行う方向ですでに準備を始めている。が、3月にもオンラインで実施したので、夏にもオンラインになる可能性も考え検討をしている。オンラインコンテンツの準備をしていく必要あり。
・参加者E(私立):3月のオープンキャンパスは中止。5月6日まで入試関連窓口業務停止。その後については未定。
・参加者A(私立):3月に話し合いをしたが、推薦枠を増やすとか、社会人枠や留学生枠を増やすなどがあるかと思うが、教員は授業対応に追われていて、入試のことを考える時間が無い。オープンキャンパスの議論も出ていない。楽観主義的な雰囲気があってまずいと感じる。
・参加者J(私立):オープンキャンパスは中止。
・参加者K(私立):ウェブサイトでは、オープンキャンパスは5/10を予定していると、そのままになっている。ZOOMを入れるとも耳にしているが、よくわからない。
・参加者G(国公立):留学生など7月から入試が始まるが、コロナ情勢が沈静化したことを前提に進んでいるようだ。

 

・溝上:Zoomのセキュリティの脆弱さが指摘されているが、使用に関して大丈夫か。
・参加者B(国公立):使用時は常に最新版へアップデートするように大学では指示している。Zoom社も、脆弱性の指摘を受けてかなり速いペースで改善している。研究機関・企業等の機密情報をやりとりするのではなく、教育機関の、しかも授業なので、深刻に気にする必要は無いのでは、といったコメントもある。このレベルの心配をするならば、他のアプリも危ない部分は少なくない。

 

・参加者J(国公立):コロナ対策の教育では,教員のオンラインやオンデマンド教育に対する意識改革が必要。60歳以上の教員は積極的に何かしようとする気はなさそうである。しかし,大学教員にICT専門家になるように要求するのは間違っている。学生が「学び続けられるように」、大学教員にとってフレンドリーな方法での教育,たとえば「通信教育」を中心にした教育をするのでもよいと思う。ICT教育の専門家でない人が突然やってもうまくできるはずがない。

 

以上

 

 

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