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教育コロナ会議(中学高校)議事録(2020.4.25)

本日の検討議題

・コロナ情勢の今後の見通しと中高の組織的な対応(確認とアップデート)
・正式な授業開始日はいつ?今教員や生徒は何をしている?(確認とアップデート)
・生徒に対するオンライン学習環境の支援状況は?(確認とアップデート)
  ※スマートフォン1つで、PDFや動画などの課題資料に対応できるか?プリンターもない?
・(情報提供)大学の大学入試の準備状況(オープンキャンパス、募集要項含む)

 

・参加者B(私立)の学校の状況報告
・参加者C(公立)の県の状況報告

 

・生徒のオンライン授業へのモチベーションの工夫
  ※教員-生徒、生徒同士が繋がっていることの安心感、孤独感、不安の解消
・教員のデジタルディバイドをどう考えるか
・「遠隔授業」について考えるのではなく、「何を今教えるべきか」「今こそ伝えられることは何か」
・「授業とは」「そもそも学校とは、教育とは?」といった哲学的な議論がどこかでないと、場当たり的な対応にしかならない。

 

 

議論

(お断り)
・学校が特定されてはいけませんので、特定情報は抽象化しているか削除をしています。
・情報を多角的に収集するために、参加者は管理職から一般の教員までさまざまです。会議ではあまり気にせず情報をいただいています。

 

溝上:第一回教育コロナ会議で情報の共有を行ったが、1週間たって、修正点やアップデートする点もある。その内容を今回の会議で共有し、各現場で活かしてもらえればよい。

 

コロナ情勢の今後の見通しと中高の組織的な対応(確認とアップデート)
 先週(4/18)までは緊急事態宣言解除後は、対面の形式に戻るのではないかと楽観的に考えている学校が多かったが、現時点では、5月いっぱいまで緊急事態宣言が続くのではと、想定している学校が増えてきたようである。動きがはやい学校では、第二波、第三波を想定し、学期末までオンライン授業を想定している。
 生徒にとっては、学校が休みになったり再開したりすれば、学習意欲が落ちる危険性がある。桐蔭学園では、はやくとも夏明けまでは緊急事態宣言状況下を想定するくらいの状況で、学校運営の指導をしている。
 中高では、私学と公立の取り組みでかなり展開が異なっている。私学は大学と似ていて、理事長や校長のトップマネジメントがなされているかどうかで、かなり現場の状況が異なる。
 大学の話をすると、大学の方針は学長・執行部から全体として意思決定がなされていても、現場のオンライン授業の仕方や支援、成績の出し方に関しては、下の学部に丸投げしているところが多く見られる。取り組みのもっともはやい大学では、この緊急事態宣言下においてさえすでに(オンライン)授業が始まっている。他方で、履修登録さえ済んでいない大学が少なからずある。大学では、履修登録が済んでいないということは受講する科目が決まっていないということであり、(オンライン)授業を開始したくても開始できない。3月から4月にかけての組織マネジメントがここに影響を及ぼしている。無策に二か月過ぎている大学があるということである。
 中高の私学は、このような大学のガバナンスや組織マネジメントの采配の結果として理解される。はやいところではすでに時間割通りオンラインで授業に取り組んでいるところもある。もっとも、マスコミではそのような時間割通りのオンライン授業がポジティブに報道されているが、それが本当に現実的な取り組みかどうかは正直疑問がある。これについては時間があれば後で議論したい。

 

正式な授業開始日はいつ?今教員や生徒は何をしている?(確認とアップデート)
 ほとんどの学校は休校中で、現在は準備期間として、あるいは緊急事態宣言明け5/7以降の対面授業までの場つなぎとしてオンライン授業をしているか、あるいは課題を与えたりオンライン学習などをさせている。県によっては5月7日ではなく、5月の終わりに始業式を行うとしている県もあり、県によってこれまた相当の差が生まれている。

 

生徒に対するオンライン学習環境の支援状況は?(確認とアップデート)
 一度にサーバーへ集中的にアクセスする状況から、Classiや ロイロノートといった学校で導入しているICTアプリが順調に動いていない。他方で、GoogleやZoom、YouTubeなど他のアプリを教員・生徒が自由に使っていいかは判断できない学校もある。
 Zoomのセキュリティホールに関して問題が指摘されているが、多くの大学では問題点を指摘し、認識した上での運用を求めている。トップ企業の機密情報の漏洩を怖れてZoomを使用しないという話が出回っているが、教育機関でそのレベルの機密情報が扱われているかと、議論を分けた方がいいという意見もある。Zoomのこの問題を言うならば、インターネットに接続していることがすでに個人情報等を漏洩する環境にあるわけで、このようなオンライン学習の限界を理解していくことも、今回の作業には含まれる。

 

 家庭の経済状況によってオンライン学習環境を整備することを強く求められないことが問題となっている。とくに公立ではこの傾向が強い。私学では、オンライン授業をかなり積極的に展開しているが、公立では、ウェブで無料で閲覧可能な学習のオンラインコンテンツを紹介したり、課題を与えて、あとは自習させたりといった様相のところが多いという印象である。生徒の状況を電話やメールで確認する程度のことはしているようだが。

 

 大学教員の中には、PCを所有していないとオンライン授業が成り立たないと考える人が多いが、大多数の大学がパソコンをもっていたとしても、一部スマホしかないという生徒がいて、最終的にはスマホだけで対応せざるをえない学生の一定数の存在を前提とした授業設計をせざるを得なくなっている。また、プリンターを持っている学生は少ないので、プリント課題の渡し方に関しては先生方も悩んでいる。複数ディスプレイを準備できる学生は少ない。
 PCの貸与を進めている大学はあり、可能ならこの支援はした方がいい。環境整備に現金給付をする大学も出てきている。本質的にもっとも重要なのは、脱落者が出ないような中長期的な教育支援がどの程度なされるかである。

 

参加者A(公立):オンライン授業は成績をつけたり、単位を与えることを前提としているのか?
溝上:5/7以降に始まるであろうオンライン授業は、学校教育として単位をあたえ、成績をつけるという前提である。しかし、オンライン授業だけで成績をつけるに値する質を担保できるのかは別問題である。率直に言えば、難しいと思う。
 緊急事態宣言下ではどの学校もオンラインで授業せざるをえないが、緊急事態宣言が解除されれば、三密回避の制約下で対面授業が可能になるので、そこで取り戻すという進め方になると思う。しかし、第二波、第三波が来ることも予想されているので、緊急事態宣言が解除された後、再びまた宣言が出されることも想定しておかねばならない。しばらくはこういう状況が続き、その意味でオンライン授業がある程度できる環境を構築しておきたい。
 オンライン授業で対面授業と同じ質を保証するのは難しい。あくまで非常事態下でのつなぎだと考えている。補習や夏休みなどで質をカバーしていく必要がある。もちろん、オンライン授業や学習独自の利点はけっこう挙げられており、対面授業ではできなかった取り組みをすべきだという意欲的な学校や教員は少なからず見られる。とにかく、オンライン授業がそのまま対面授業の代わりになると考えるのはやめたほうがいい。多くの生徒は、自宅で学校と同じことを長時間求められることには耐えられない。

 

学校の状況報告
参加者B(私立):4/8以降、学校へ登校することが困難となったため、各デバイス(中高は全学年端末を保有している。高1まではiPad高2 surface 高3Chromebookを使用している)のマニュアルを生徒用、教員用に作成した。
 端末の所有状況、ネットワーク環境についてアンケートを実施した。結果、全ての家庭でネットワーク環境はあった。親のテレワーク等で端末の使用に制限がある場合は、学校から端末を送付。4/9に教員向け研修を実施。
 オンライン授業初日にオンラインホームルームを実施し、生徒に参加を求めた。翌日以降授業開始。
溝上:ホームルームができるのは中高のメリット。大学でも担任制のような取り組みはあるが、できていない大学が多数。
参加者B(私立):週4でオンラインHRを行っている。教員は週2出勤、それ以外は在宅。月、火、木、金オンラインで授業。生徒は週12コマ授業を受けている。
溝上:データ通信容量の問題は?
参加者B(私立):入学時にWiFi環境を整備してくださいと言っているので、容量の制限をほとんど気にしないでいい。
 正式な授業は連休明けにコマを増やして5教科で24コマに副教科を加え、30時間授業を行う予定。生徒によっては一日6時間持つのかという問題はある。授業ばかりが続くと、生徒の負担は大きいので、ある程度時間割を柔軟に変更し、授業ばかりが続かないようにしていく必要があるのではないかと考えている。授業時間は40分。
溝上:桐蔭学園の中学高校では30分オンライン授業にして、午前中までで時間割授業が終わるようにしている。あとは課題にとりくむことで50分の質を担保。
参加者B(私立):上記の取り組みに加え、教員のオンライン授業での失敗例などをまとめて、マニュアルを作成している。
溝上:オンライン授業に出なかった生徒は欠席扱いか?
参加者B(私立):現在休講期間中なので、欠席にはならない。ただし出席をとらないと参加しない生徒もいるため、出てこない生徒には個別で電話連絡をして、対処している。
 私の県では休校要請が続いている状況下で、授業をやっている間は、出席にカウントできないと思う。ただし文科省からは、オンライン授業であっても評価するように指示を受けているので、難しい。
溝上:私の解釈だが、緊急事態宣言は、登校という意味での臨時休業を求めるものであって、オンライン授業を行い正規の授業を行ってはいけないということを意味していない。条件が整っていれば、休校しないでいい。大学のいくつかのところは、桐蔭横浜大学も含めて、この緊急事態宣言下、しかも首都圏においてすでに正式な授業を始めている。5/7以降緊急事態宣言が延長されても、オンライン授業で引き続きの実施を予定している。公立の中高は教育委員会の指導が入り、このあたりの判断をされるのだろう。私学の場合は、大学と同じで、個々の学校の判断が求められる。

 

参加者C(公立):私の県は5月末まで通常授業はしないことになっている。何日か登校日を設けて登校しているところもあるが、原則登校禁止。1人でも感染者が出れば休校扱いになると考えられ、夏休みまでは対面授業はできないことも想定している。長期化することを想定した場合、成績を付けるよりは、単位認定さえできればよいと考えている。
 県内の小学生から高校生までの実態としては、インターネットと全く関われない家庭が4%程度ある。各学校にとって、そういった児童生徒に対して情報機器を用意してもらうことが課題。県教委が、県内の教職員及びすべての児童生徒にGoogleアカウントがもてるように準備。教員同士が同じプラットフォームで話し合うことができている。情報交換の場や、マニュアルが共有できるようになると、自然に交流がすすんでいく。
 何とか時間割を組んで授業に近い形をとることは、5月中旬以降で想定、まずば、とにかく生徒と教員が繋がっている環境を作ることに注力している現状である。
参加者D(私立):個人情報の漏洩をどう考えるのか?先生と生徒が1対1で話すこと、生徒同士でいじめなどのトラブルになるのでは?
参加者C(公立):そういったトラブルは想定したうえで進めている。付与したアカウントに関しては、外部との通信はできない。心配事はあるが、各生徒に指導する、指導できるのが学校であるというスタンス。

 

溝上:生徒のオンライン授業へのモチベーションの工夫について。オンライン授業から脱落してく生徒が1人2人であればよいがもっと複数人でてきたらどうなるのか。
参加者C(公立):小学生は配信型で説明を開始した場合、22秒で離脱する。高校生まで含めて、7分以上の動画の場合は、92%の生徒は3分で早送りにしてしまう。その後、戻って視聴する場合もあるが、離脱する場合が多い。
 対策としては、
①5分以内の動画であれば、離脱率は下がる
②10-15分教員が登場し、課題の紹介。その後、生徒に100点になるまで、課題を提出するように指示。また、課題のミスの多い箇所のみを説明する。生徒自身自分で勉強をしているという実感がもてるようだ。
溝上:チャット一つでもオンライン学習はアクティブな動きを求める。教室での授業をただ配信するだけで考えない方がいいのではないか。教室ではできないことを考えていかなければならないと、先ほどの大学セッションで議論された。
参加者E(私立):5月の中旬くらいからオンライン授業を組み込んでいきたい。そのためにこの2週間は各教員(非常勤含め)が30分のZoomの授業ができる、録画ができるように指示があった。
 家に端末があるのかの確認は済んでいる。スマホは95%以上持っている。スマホでできること、容量の問題を念頭に置きながら準備を進めている。授業を欲している生徒もいるが、ミュートを勝手に解除したり、落書きをしたり、遊んでしまっている生徒もいる。教員が操作に慣れていないため、注意が追い付いていない。
参加者F(公立):現状、課題を2週間に1度郵送して、取り組んでもらっている。一部の先生はYouTube、ClassroomやZoomを導入している。生徒の状況を把握することはまだできていない。高校三年生を担当している教員の一部は、受験生なので自発的に勉強しているだろうと、楽観的な見方をしている。
溝上:緊急事態宣言が延長されれば、正規の授業開始がいつになるかという県からの通知は、見通しだけでも出されているか?
参加者F(公立):私の県では出ていない。しばらくは難しいのではないかという共通認識が教員にあるだけである。
参加者G(公立):2週間に1度生徒に課題を送っている。新しいツール(Zoom等)の導入を急ぐ先生と、慎重な先生の間の調整で止まっている。Slackで連絡はとれているが、対面よりは業務のスピードが遅くなるので、あまり進まないまま、連休に入るのではないかと危惧している。連休後に正規の授業がはじまるのかについては議論がなされていない。

 

溝上:教員のデジタルディバイドの問題についてご意見をください。
参加者F(公立):オンライン学習システムの体験の研修があったが、参加後に使ってみた(使えた)教員は全体の3分の1。持続可能性を考えると、誰でも利用できる郵送ベースで進め、やりたい人だけが新たなツールを導入するしかどうしようもないのではないか。
参加者B(私立):教員皆がツールを使えるように、全員に研修し、段階ごとのマニュアルも作成した。教員同士の教え合いも生じている。
参加者H(私立):デジタルディバイドの問題は根深い。マネジメントがしっかりしておらず、現場に任せられているので、教員が好き勝手やってしまって、アフターフォローや授業のあるべき姿などの議論がされぬまま進んでいることを危惧している。緊急事態宣言明け後の対応は、現場には降りてこない。

 

溝上:最後に大学での大学入試に向けて。5月のオープンキャンパスは中止している大学が多いようだが、意欲のある大学はオンラインで可能なオープンキャンパスを目指している。
 入試要項はほとんど手を付けられていないようである。まずは、緊急事態宣言が解除されないと始められない様子。夏から秋にかけての選抜入試が実施できるかを見通せている大学はないのではないか。
 このような状況を逆手にとって、ずっとできなかった秋入学に移行しようという議論がある。グローバル化の中、海外と歩調を合わせることは学生にもメリットが大きい。
参加者F(公立):試験の出題範囲に変更はあるのか。
溝上:学習指導要領に基づいてすべてを範囲とするのではなく、出題範囲を限定して、そこから問題を作ればいいのではないかという議論は聞いている。高校生の学習状況に配慮して作成されることが求められることは間違いない。

 

以上

 

 

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