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【中学/社会】時代を大観する「視点」の学習者による設定-中学校社会科・歴史的分野-

郡司直孝(北海道教育大学附属函館中学校)

北海道教育大学附属函館中学校のウェブサイト

溝上のコメントは最後にあります。

対象授業

 

 

第1節 歴史を大観する学習に関する実践経緯と本授業の位置付け

本稿は、中学校社会科・歴史的分野における、各時代を大観するための「視点」を、単元の学習前に学習者が自ら設定する授業実践について報告するものである。

本校社会科は、このような中学校社会科・歴史的分野における、各時代を大観する学習のための授業構築について、様々な実践に取り組んできた。

当初は、時代の学習を終えた後に授業者が学習者に対して「政治」や「経済」というような概念を、時代を大観するための視点として与えていた。その結果、学習者は、その時代を振り返る機会を得たものの、各視点の記述は、教科書の文を寄せ集めただけのものであった。何といっても、単位時間の学習がどこへ向かっているのかが明らかでないため、学習者にとって、その1単位時間の学習内容のどこに注目すべきかが定まっていなかった(そしてその結果、記述は「寄せ集め」となっていった)。

この課題を踏まえて、単元の始めに、学習者に対して、単元末に時代の特色を踏まえて時代を大観する学習活動に取り組むことや、そのための視点を、あらかじめ示すこととした。その結果、多くの学習者が、各単位時間に時代の「要素」を少しずつ収集し、単元末にはそれらを活用して、他者との意見交換や議論を踏まえながら、その時代を大きくとらえて論じることができるようになっていった。

しかし、次の2点が課題として検討されてきた。

① 視点として用いられる「政治」や「経済」という言葉は、聞き馴染みのある言葉にも関わらず、きわめて抽象度の高い言葉であることから、事象を収集するための基準としての役割を十分に果たすことができていない。学習者にとって、「視点」と具体とが行き来することができるような段階を設定する必要がある。

② (とくに筆者自身の課題であるが)これまでに小学校における学習を踏まえるという点がきわめて不十分であった。小学校での学習を活用する場面を設定する必要がある。

この2つの課題を克服し、時代を大観する学習のための授業構築の試みとして、本授業を位置付けたい。

 

 

第2節 本授業で育成を目指す資質・能力

本校では、2017年度学校研究から、育成を目指す資質・能力として「各教科等の資質・能力」「情報活用能力」「市民として求められる資質・能力」を設定し、すべての教科等の各単元で育成を目指す資質・能力を明らかにしている。本単元のうち、本稿において報告する授業では、以下の資質・能力の育成を目指している。

 

表1 目指す資質・能力

各教科等の資質・能力 (思考力・判断力・表現力等)
中世の日本を大観するための視点について具体的な歴史的事象に基づいて考察し、表現すること。
情報活用能力 (思考力・判断力・表現力等)
複数の情報を結びつけて新たな意味を見出したり、自分の考えを深めたりすること。

 

 

第3節 単元構成の工夫

本単元は、大きく「単元の始め」「各単位時間」「単元末」の3期に分けて構成している。各期での主な学習活動は、以下の通りである。

 

表2 単元構成

単元の始め
  • 学習者を4人1組に構成し、中世という時代の特色を表す具体的な事象から、それらを整理した概念としての「視点」を4つ設定する。
  • 4つの「視点」について、グループの4人がそれぞれ担当する「視点」を決定する。
    ※次節において詳説する。
各単位時間
  • 授業者による講義を聴いて、内容を整理する。
  • 授業末の10〜15分程度の時間で「中世とはどのような時代か」という課題(本校社会科では「単元を貫く学習課題」と呼ぶ)に対して、その時間での学習内容を踏まえながら、担当する視点からの記述を行う。
単元末
  • 4人が再度グループを構成し、「中世とはどのような時代か」に対して、各単位時間で少しずつ収集し続けてきた時代の「要素」を交流する。
  • 時代の「要素」について、時代を大観するための整理・分析を行い、グループ内の他者と意見交換や議論を行う。
  • 最後に学習者個々人が「中世とはどのような時代か」という課題への記述を行う。

 

 なお、本単元を構成するにあたって、本単元以前の地理的分野や歴史的分野での学習において、次のような工夫を行っている。

① 古代において、授業者が視点を与えた上で「古代とはどのような時代か」という課題を学習者に示し、それに対する学習者自らの考えを記述する学習活動を設定している。すなわち、学習者が中世と同様の学習活動を、古代において経験できるようにした。

② 具体的事象から、それらの整理した概念としての「視点」を考え出すことは難しい。そこで、地理的分野と歴史的分野を並行して学習する中学校社会科の特性を生かし、本単元前に、地理的分野における「世界の諸地域」で、各州の概要を把握する際に、視点を授業者が例示した上で調査する学習活動や、視点を学習者自身が設定する学習活動を意図的に設定した。

 

 

第4節 実践について

本節で報告する授業は、前節における「単元の始め」に当たる時間である。以下にその構成と工夫を述べる。

(1) 本授業の目標や展開の説明

(2) 「視点」を考える個人の取組

図1 授業の様子1

(3) 「視点」を考える4人1組の取組

図2 授業の様子2

 

(4) 4人1組で設定した「視点」の担当割り振り

 

 

第5節 課題

具体的な事象を根拠にして時代の特色をとらえるための「視点」を設定することは、難易度が高いものである。だからこそ、教科の分野を横断して取り組むことが重要であると考えている。そのため、今後も同様の学習活動を継続・発展させていく必要がある。とくに、適切な視点の設定や時代の大観に関する資質・能力を、意図的・計画的に育成するために、3年間の授業計画の構築とその実践が課題であると考えている。

 

 

溝上のコメント

 

 

プロファイル

郡司 直孝(ぐんじ なおたか)@北海道教育大学函館中学校


  • 一言:生徒が、現在と将来での多様な場で活躍することができる力を育んでいきたいと願っています。そのために、生徒自身が持っている「これまで」の学びを大切にしながら、「これから」につなげていくことのできる授業構築と授業改善に引き続き取り組んでいきたいと思います。

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