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石垣裕介(秋田県立本荘高等学校)
秋田県立本荘高等学校のウェブサイト
森朋子のコメントは最後にあります。
(1) 授業を通して身に付けさせたい力
複雑化する現在の国際社会では、世界の諸地域における文化の多様性と複合性について、様々な条件をもとにして多角的に考察する力が必要である。そのため、知識量よりも、知識を活用して思考する力、思考したことを他者に対して的確に表現できる力を身に付けさせることを目標として指導している。そしてそれらの力をもとにして、現代社会の諸課題を的確に分析し、未来を主体的に創造していく力を育んでいきたい。
(1) 単元
第Ⅱ部 第5章 ヨーロッパ世界の形成と発展 3 西ヨーロッパ中世世界の変容
(2) 単元の目標
11~13世紀の西ヨーロッパ世界の形成と変動について、政治・経済・宗教・文化相互の関わりの中で考察し、そのことを通して歴史的事象を多面的に理解する力を身に付ける。
(3) 教材観
使用教科書『詳説世界史B』(山川出版社)では、十字軍について「…聖地イェルサレムを支配下においたセルジューク朝は、ビザンツ帝国をもおびやかしたので、ビザンツ皇帝は教皇に救援を要請した。教皇ウルバヌス2世は1095年クレルモン宗教会議を招集し、聖地回復の聖戦を起こすことを提唱した」とある。キリスト教側の視点から記述されていることが「聖地回復」の言葉からも分かり、正しい行いのように感じてしまう生徒も少なくないと思われるが、十字軍は、実際にはイスラーム教徒に対して無差別な殺戮や略奪を繰り返したとされる。本時は、第1回十字軍について異なる視点から書かれた複数の資料を比較することで、多角的かつ多面的な歴史的思考力を培いたい。資料の読解は、生徒それぞれが役割をもって活動を進められるよう、ジグソー学習の要素を取り入れる。また、異なる資料の読解を最後に組み合わせることで、多面的な見方の中から生徒自身が結論を導き出せるようにしたい。授業の始まりと終わりで同じ問いを考察させ、授業内での成長や変容を実感させるようにする。
(4) キャリア教育の視点
現代の社会で起こっている問題を考察させる手立てとして、十字軍という歴史的事象を用いる。過去の出来事の考察を通して現在を的確に分析し、校標である「右文尚武」の志を持って未来を主体的に切り拓いていく力を身に付けさせたい。
(5) 授業の展開
今回の授業では、以下の点を特に意識して授業を進めた。
① 予習を前提にして授業を進めること
② 同じ学習課題を授業の最初と最後で考察し、授業内での成長や変容を実感させること
③ 内化(個人での活動)→外化(グループ等での協働)→内化……の連続とすること
④ 最後は、内化で終わる(個に落とす)こと
学習活動 | 指導上の留意点 | 評価 | |
---|---|---|---|
課題設定 (10分) |
【予想】・ワークシートでの予習をもとに、ブッシュ演説が世界中から批判された理由を予想し、発表する。
内化 → 外化
|
◆想定される生徒の考え ・アメリカにキリスト教徒ではない人もいるから。 ・証拠もなく戦争をすると宣言しているようだから。 | |
学習課題:同時多発テロ後のブッシュ演説は、なぜ問題とされたのだろうか? | |||
考察 (15分) (10分) | 【資料の読解】・3つの資料をもとに十字軍に関する記録について考察し、ワークシートをまとめる。内化 ・グループで共有する。外化 【資料の比較・検討】・まとめた内容を新たなグループで説明し合い、十字軍に対する異なる3つの立場からの見方について話し合う。外化 | ・3つのグループを作り、3種類の資料を分担する。 A:フランク人(十字軍)の記録 B:イスラーム教徒の記録 C:ユダヤ教徒の記録 ・資料A~Cのすべてが集まるように新たに3人グループを作る。自分の資料との共通点、相違点を意識して、メモをとりながら聞くよう助言する。 | ・資料を正確に読み取り、的確にまとめているか。(観察) 【資料活用の技能】 ・多角的な視点から関係を考察し、説明できているか。(観察) 【思考・判断・表現】 |
本時の結論 (15分) | ・学習課題について、再度授業内容を踏まえて文章でまとめる。
内化
・グループで共有し、代表者が全体で発表する。全体で共有
|
・生徒の記述の中からキーワードを選び、まとめさせる。 ・現代の問題を考える際にも、多角的な視点が必要であることに気付かせる。 |
(6) 生徒の変容 上:予想(before) 下:結論(after)
(1) 成果
(2) 課題
石垣 裕介(いしがき ゆうすけ)@秋田県立本荘高等学校(地歴公民科(世界史)