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(AL関連の実践)【小学・音楽】常時活動を大切にスムーズな授業の流れにのって学びに向かう力を育もう-授業の中での不自然な切れ目は教師の都合-           岩井智宏(桐蔭学園小学部)

桐蔭学園小学部のウェブサイト

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対象授業

 

 

第1節 目標

音楽の授業で大切にしたいこと、それは授業を通して音楽力を子どもたちが身につけることによって、子ども一人一人が将来それぞれのスタイルで一生音楽を楽しむことが出来る力を育むことである。それと同時に音楽を通してコミュニケーション力を身につけてほしいと考える。コミュニケーションというのは現在様々な教科で使われている言葉だが、音楽科だからこそ培える点に着目したい。まず大きな特徴は、常に音が存在し音楽に導かれて進んでいく授業であるという点である。その中で、人にとって特に身近な楽器が「歌声」である。歌声は誰もが平等にもっているものであるが、ここにはコミュニケーションにつながる大きな可能性が秘められている。

「歌声」というのは、いざ改めて人前で求められるとなかなか表現しにくい繊細なものである。また気持ちがのっていなければ、その心に比例して声は小さくなる。声は、人の心そのものを象徴しているようなものである。心は、音楽以外の授業においても意欲につながり、人とのコミュニケーションにも大きく関係してくる。コミュニケーションにおいてまず大切なのは、自分を出すことではないだろうか。しかし、その点についても得意、不得意が存在する。音楽の授業は、「自分を出す」すなわち心を解放することが必須となってくる。逆の観点から見ると音楽活動が活発になっていれば一人一人の心が解放されている証にもなる。

歌唱授業を通して、少しずつ声が出せるように活動を進め歌声に溢れる雰囲気が生まれくることは心を育成するうえで大きな価値ではないだろうか。その雰囲気が作られてきたら次は、学校教育だからこそ味わえる全員で一緒に歌う活動である。他者と共に声を出す良さ、それは周りの友達の声と調和を求める活動へとつなげていくことが出来る。

無我夢中に表現することが出来る空間、それは心の解放が出来ている空間である。更に友達との声の調和に目を向けることで、人と合わせることの喜びを感じ達成感を味わい音楽を通したコミュニケーション力を培っていってほしいと考える。

 

  

 

第2節 常時活動

授業をより充実させるために、私は「常時活動」という時間が大変重要だと考える。また常時活動を充実させることはアクティブラーニングや授業UD(ユニバーサルデザイン)につながる授業作りの幅を大きく広げてくれる。

(1)常時活動とは

常時活動は、毎時間少しの時間を使って音楽的能力や知識を年間通して積み重ねていく活動である。その中で大切なことは、まず活動が楽しいこと。そして楽しい中にねらい、学びがあること、繰り返し行える工夫というのがポイントとなってくるように感じる。

アクティブラーニングや授業UD(ユニバーサルデザイン)の活動においても常時活動は大変効果的な活動である。

(2)常時活動の魅力

私は、子どもに大きな負荷をかけずに楽しみながら毎授業の積み重ねで様々な力を培えることが常時活動の最大の魅力だと感じる。また、常時活動を取り入れることで、授業にメリハリがつき授業の流れも良くなっていく。教材で力をつけることも大切だが、その教材を最大限生かすためにも常時活動で力を培うことはとても重要だと考えている。また、小さな積み重ねで、授業を通して取り組むことが出来る楽曲の幅が広がってくるのだと感じる。

 

 

第3節 授業実践例

2017年6月下旬ごろに行ったアクティブラーニング型授業の実践例である。

題材のねらい:

 

指導計画:
ステップ1 主旋律を正しいリズム、音程で歌える。
ステップ2 副旋律を正しいリズム、音程で歌える。
ステップ3 主旋律、副旋律を対旋律につられずに重ねて歌える。(本時)
ステップ4 重ねたハーモニーを心地よく感じることが出来る。
ステップ5 歌詞と曲想を照らし合わせて思いをもって歌える。

 

本時のねらい:

実際の授業:

歌唱は自分自身が楽器となるため心理状態がそのまま反映されやすい活動である。気持ちがのらなければ大人でも歌を歌う気持ちにはなりにくいものである。だからこそ、心を耕し、気分を上げる常時活動に価値をおいて毎授業取り組んでいる。また、楽しむ活動の中に力をつけたい音楽的要素を含むようにすることはいつも念頭に置いている。

なお歌唱の常時活動では、これらの内容を含むように構成している。
①歌(表現)の楽しさ・心をほぐす ②他者との関わり
③声の出し方 ④旋律、ハーモニーを感じる耳

 

本時で使う教材「すばらしい言葉」「夢の世界へ」は、どちらも親しみやすい旋律で、A(a4+b4)+B(c4+d4)の二部形式で構成されている。どちらの曲もBの部分が簡単な2部合唱となっており、違うパートを重ねて演奏しハーモニーが生まれることで、演奏することに更に興味を持ち他者と演奏することの喜びや音楽の広がりを感じてほしい教材である。そして、斉唱や簡単な合唱など全員で一つの音楽をつくっていく体験を通して,協同する喜びを感じてほしい。歌詞においても子どもたちが口にしてかみしめてほしい優しい歌詞である。

教材を扱う上で気を付けていることは、同じ曲で何度も歌えるように、取り組み方にバリエーションを持たせることや繰り返し何度も歌うときに児童がその都度自分自身で気を付けるポイントを理解して活動できるようにすることである。これらを気を付けることで、一つの教材でも子どもたちが新たなものとして感じ取ることに繋がり新鮮に活動することが出来る。

授業の終わりは、輪唱やリズムゲームなどで音楽的技能を刺激する内容でありつつ楽しい空間を大切に考え、授業のイメージが子どもたちにとって明るいものとして終われるように心掛けている。

本時では、子どもたちが心を解放してそれぞれに目標をもって楽しみながら学びを深めてほしいと考えている。常時活動から本活動へのつながりも自然な流れを意識して授業を進めていきたい。

 

図1 本時の指導案(PDF大きく)

 


 図2 授業の様子

 

 

第4節 振り返りと今後の課題

今回の授業では比較的全員が友達とふれあいながら前向きに取り組めたように思う。このクラスの子どもたちは学級で担任の先生から素晴らしい学級経営をうけて学校生活を過ごしている。その学級で作られた良い雰囲気を音楽の力でさらに広げることが出来るような実践を考えている。我々教師は、子どもの笑顔・やる気が一番の原動力である。だからこそ子どもたちが意欲的に学びに向かう雰囲気作りをいつも考慮しなければと感じる。

可能性に満ち溢れた子どもたちが、楽しみながら技能・知識を磨きコミュニケーション力を豊かに身につけていける授業展開を今後さらに研究していきたい。学校教育では集団で動くことが多いが「個」を見つめることを忘れずに一人一人の子どもの変化を認めていきたい。また、一人一人の子どもを知ることで価値ある評価にもつながっていくように感じる。

 

 

溝上のコメント

 

【参考ページ】

(桐蔭学園)個→協働→個の学習サイクル

 

 

プロファイル

岩井智宏(いわい ともひろ)@桐蔭学園小学部(音楽科)


  • 一言:授業を行う際に大切にしていることは、音楽を通して心を解放し、他者とのつながりを深めてコミュニケーション力を高めることです。また、子どもたち一人一人の変化をしっかり理解し「個を認める」というを概念を忘れないよう実践しています。

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