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滋賀県立玉川高等学校のウェブサイト
溝上のコメントは最後にあります
本校(滋賀県立玉川高等学校)は、今年度創立35周年を迎えた普通科高校であり、今年度は、1~3年生の各学年8学級の合計24学級、約950名の生徒が在籍している。
本校生徒は、「真面目」「心優しい」「穏やか」「指示にはきっちり従いがんばる」・・・長所はいくつもあるものの、同時に、教職員の中からは、<長所も、過ぎれば課題になってしまっていないか?>という声があがることもあった。
また、さまざまな場面で、「急激に変化する社会に対応し得る生徒の資質・能力とは?」という議論がなされ、国や有識者からも今後の教育の方向性や在り方が示される中、本校は、≪文部科学省 高校生の基礎学力の定着に向けた学習改善のための調査研究事業(H28~H30)≫の研究実践校として指定を受けることとなった。
この事業は、【高大接続改革】の一つとして位置づけられたものであり、本校では、今年度は、調査研究の視点を以下の2点において、研究・実践に取り組んでいる。
現在、各教員が、また教員集団として、試行錯誤しながら自らの指導力向上と生徒の学力向上に向けて取り組んでいるところであり、この文部科学省指定事業の研究・実践の一環として、この度、溝上先生に授業を参観していただき、指導助言を受け、教員研修を実施していただくという機会を得ることができた。
普段の授業では、「聞く」と「活動する」を意識するように声かけをしている。導入では生徒が説明を受け活動するときに漠然と問題を考えないよう、既習事項とのつながりや解答のポイントとなる箇所を、板書を使って説明をする。そこでは聞くことに集中させ、次の活動にスムーズに移行できるように注意している。活動する時は、単元や学習内容によってはグループワークを行うが、基本的には演習時は自席の前後左右で教え合うように促している。活動時に注意していることは、ただ答えを教えて終わらないように、教える側と質問する側が考えを共有できるよう、過程を大切にするように指導している。
対象のクラスは文系クラスということもあって、数学に対する興味・関心が高い生徒が多いとは言えない。また、学力差もみられる。しかし、学習意欲はある為、授業への取組は良好である。また、ペアワーク、グループワークでは積極的に話し合う姿を見ることができる。
普段の授業では、教師の一方的な説明で終わってしまうことも少なからずあるため、この単元における本時の学習内容や活動内容を検討し、生徒同士で考え発表する機会を設け、理解を深めることを目標とした。
今回は数学Ⅱ(新編数学Ⅱ 東京書籍)の「式と証明」から「平方による比較」で公開授業を行った。等式については、中学校で等式の基本的な性質と一次方程式、連立二元一次方程式、二次方程式を学習した。不等式については、「数学Ⅰ」で不等式の基本的な性質、一次不等式及び二次不等式を学習した。
講義形式で一方的な説明になると、証明に必要な式変形を生徒自身が工夫する場面が減少し、型にはまった証明方法しか利用できなくなる為、間違った証明をしても疑問に思わなくなり、考える場面が減少してしまう。それを解消する為に生徒の状況に合わせて問題設定をし、生徒同士で話し合わせることで、互いに疑問点や不十分な箇所を指摘することができ、より論理的な思考力や表現力を養うことができると考える。
過程 | 学習内容・学習活動 | 教師の指導・支援 |
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導入 (5分) |
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x>0のとき 1+x>√(1+2x) を証明しなさい
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展開① (25分) |
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展開② (10分) |
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まとめ (5分) |
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これまでの授業では、演習時には生徒同士で教え合い、考えを共有する機会を作るような声かけや設定をするよう意識はしているものの、一方的な講義形式の授業をすることも少なからずあった。これは、授業の進度等が気になってしまい、グループワークをさせるところまではなかなか行けていなかったためである。
今回、研究授業を行い、溝上先生からアドバイスをいただいたり、さらに、研修を受けたりすることで、自身の課題に気づくと同時に、グループワークを取り入れた授業をすることの意義や目的、留意点、そして「高校卒業後=大学や社会」につながる学びについての理解を深めることができた。
また、研究授業を行うにあたり、同じ数学科の教員(学力向上研究委員・関教諭)をはじめとして、他の教員と話したり意見を交わしたりしながら、授業づくりを進めていった。私たち教員自身が主体的・対話的に協働することも、よりよい授業づくりには不可欠であると実感しているところである。
授業づくりをする中で、より一層「単元」を意識し、グループワークを効果的に取り入れることを研究・実践していきたい。
前節でも述べたように、普段の授業では、演習時に教え合うことを促してはいるものの、グループで複数の考えや意見を話し合い、対話的・協同的に学び合うことは十分ではないと感じている。考える過程を大切にし、生徒同士で自分の考えを説明し話し合わせることにより、さらに理解を深め、主体的で自律した学習者を育てたいと思う。
また、効率的で効果的な学習活動を行うために、各グループでの発表をする際には、ホワイトボードやICTを活用するなどして、生徒が板書する時間を省けるようにしていく。そうすることで、複数のグループの考えを全体で共有しやすくなり、生徒が自分の言葉で説明することができる。
加えて、私自身も、発問のスキルを磨き、講義形式やグループワークという授業形態を問わず、生徒が考え、自分の意見を発表できる機会をもっと作っていきたい。
まなボードを用いて前に出てきて発表
(左)「(桐蔭学園)前に出てきて発表」(関谷吉史)
(右)「【中学校/英語】協働学習と発表で英文法の知識を定着させる授業」(竹村紗季@帝塚山学院中学校高等学校)
【参考ページ】
大島大二(おおしま だいじ)@滋賀県立玉川高等学校