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本校では、週3回の保健体育授業を3種目3教員の通年で授業展開しております。その中で、特に中学1年次においては、各種目の知識や技能以外に授業内でのルールや秩序の確立に重きを置いて3教員で連携を取りながら進めています。また、教科を越えて授業においてのAL授業の基礎作りも全教員の共通意識として取り組んでいます。
授業展開としては、生徒の運動能力の低下や偏りなどを感じることから、「動き作り」をウォームアップに取り入れています。回転運動やバランス体操などで、怪我の予防につながる身のこなしの習得につなげてもらいたいと考えています。
ダンス授業としては、年間目標を以下の3つとしています。
○動き作り
・滑らかな回転運動と姿勢の良いバランスを保持できるようになる。
○ジェスチャーゲーム
・与えられたテーマを少人数で表現できるよう協力しダンスを創る。
・対称の動きを取り入れることができる。
・他のグループの発表を観察し、自分の意見を伝えることができる。
・クラスメイトからの意見を丁寧に傾聴することができる。
〇体操・柔軟・動き作り(ブリッジ、三点倒立、後転、倒立前転)を行う。
留意点
○4人×8グループを決め、各グループでまなボードとマーカーを準備する。
○本時の流れと対称の動きを理解する。
各グループ2人組を2つ作り、お題についてのジェスチャーを8カウント×2ずつ創作し、 入れ替えを8カウント×1で行い、グループで合計8カウント×5を完成させる。その中二 人組での対称の動きを含むことと、二人で協働することを+αのテーマとする。
留意点 グループ毎にテーマである「対称」「協働」を記入し強調する
○各グル―プにお題を発表
I イメージTIME(2分)
各グル―プで、まなボードにお題についての連想する物、事柄をできるだけ記入する。 書いたものの中からジェスチャーするものを2つ決める。
II 創作 TIME(12分)
留意点 創作時の約束を確認
III 発表TIME
留意点
○振り返りシートの記入
○見学者からの総評
○授業担当者からの総評と次回の予告
授業にグループワークや振り返りシートの記入を組み込むことにより、時間的に活動量を維持できるかがポイントと考えていました。活動量を増やす「体で汗をかく時期(1学期)」と、グループワークなどのアイデアを表現する「頭で汗をかく時期(2学期)」と分けて、仲間と協働の「創作ダンス(3学期)」に分けることで、年間授業のメリハリになりました。ペアワークなどの意見交換を取り入れることで、体育実技が苦手な生徒もそれぞれに課題やテーマが出て来たので、授業への参加意識が高まってくれたことが何より授業展開をしていて嬉しく感じたことでした。振り返りシートの記入では、授業の内容をまとめることでの授業の確認・反省に加え、前授業と本授業の流れを視覚から確認することができ、各授業のスムーズな進行に繋がっていると感じます。また、コメントを残すことで生徒との信頼関係を構築するうえで大きな後押しになっていると感じています。
一番大切にしていることは、「明るく真面目に」の雰囲気作りです。ダンスという種目の特性と中学1年男子対象であることを考慮すると、リズムに乗って踊ることへの照れ・恥じらいや、失敗することへの怖れなどの壁を乗り越える「休み時間のような明るい雰囲気」と、体育授業としての安全管理をふくめて真面目にやっている生徒が嫌な思いをしないような「一生懸命取り組める真面目な雰囲気」の共存を目指しています。その実施に際して、授業構成については「10~15分×3」の枠組みを基本にして、活動ははやく説明はゆっくりの「授業テンポ」を心掛けています。生徒掌握については、安全管理から逸脱する危険行動の「約束事」の徹底と、授業の流れを止めずに秩序を保つための「ユーモアのある事前指示と笑顔の牽制」により生徒の行動の全てに目が届くように努力をしています。
身体活動の上達において、達成目標の明確なイメージ像を作り、生徒が自らの身体活動を客観視し、自らのイメージとの差を見つけ、差を埋めるためのアプローチを思案し、やってみるという5つのプロセスが不可欠と感じています。このサイクルの構築サポートになるのが言語活動と考えています。不得意な生徒や壁にぶつかっている生徒は、活動目標が明確でなかったり打開策を講じることができなかったりすることが多いので、頭の中を整理して次への展開を考える思考の展開を支える言語活動は体育授業の実践の場で効果をあげている実感があります。最終的には身体活動中にも頭の中ではこのサイクルが円滑に行えるように言語活動を中心に、頭でも汗をかいていくことを大切にしています。
学期が進み、ペアワークから少人数や大人数のグループワークに移行していくにつれて、参加ができない生徒がでてきてしまうことに対して、改善をしていかないとならないと感じています。当人の参加意識に加えて、参加出来ている生徒に対しても他者を取り込むことへのアプローチを掛けていきたいと思います。また、生徒主体の時間が多くなるにしたがって、授業秩序や危機管理の面への懸念は教員主導より膨らんでくると考えられるので、事後対応が少なくなる工夫や仕掛けは引き出しを増やしていく必要があると感じます。
AL型授業で構成するようになってから、生徒の考え方や感性に触れる機会が多くなり、生徒の内面と相対する機会が増えていると感じます。表面上の行動の部分だけでなく、その生徒の内側の部分を承認していくことが、生徒自身が自分と向き合うことへの促しになり、成長への足掛かりになると感じます。人として成長を促すことの目的を達成するために、各教科各授業での専門知識の習得を手段として、教科の垣根を越えて取り組んでいくことが人を育てる教育になっていくと考えます。
【参考ページ】
✓ (桐蔭学園の教育改革)個-協働-個の学習サイクル(関谷吉史)
小倉丞太郎(おぐら じょうたろう)@桐蔭学園中等教育学校