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コロナ情勢に対する学校の状況(中学高校)(2020.4.21版)

(お断り)
・本ページは、教育コロナ会議等を通して「コロナ情勢に対する学校の状況(中学高校)」を溝上がまとめたものです。しっかりしたものを作ろうと考えすぎると時間がかかるので、たたき台程度として随時更新する形を取ります。理解や状況把握がうまくできず、不適切な説明になっている箇所は遠慮なくご指摘ください。必要に応じて修正していきます。
・教育コロナ会議の趣旨と目的はこちらを参照してください。

 

このページで検討する問題

①コロナ情勢の今後の見通しと大学の組織的な対応
②正式な授業開始日はいつ?今教員や学生は何をしている?
③家庭のオンライン学習環境の状況把握や整備の促しは?

 

 

問題に対する学校の状況

①コロナ情勢の今後の見通しと学校の組織的な対応
(問題を見る視点)
・学校の管理職が以下のコロナ情勢の展開をどれだけ想定しているか。
(ア)5/6で緊急事態宣言は解除されない可能性 
(イ)第二波、第三波が予想され、再び緊急事態宣言が発令される可能性
(ウ)早くても夏明けまではこの状態が続くだろう
(エ)おそらく1年は3密回避の制約下での教育推進と考えておいた方がいい

 

(学校の状況まとめ)
・大学では、(ア)~(エ)をどの程度想定して現在の対応を打ち出すかは、学長をはじめとするガバナンスのあり方として見ていくことができる。要は、非常事態に対して執行部が一般教員にどのように迅速に意思決定を伝え、具体的な取り組みに向けて指示をし、ガイドラインやサポート体制を打ち出していけるかが重要なポイントとなる。これまでのICT教育の推進があればそれは推進の基盤となり、それが多少弱くても、ガバナンスがしっかりしていれば、この段階ですでに体制の構築や準備を力強く推進している。
   ※「コロナ情勢に対する学校の状況(高等教育)(2020.4.21)版」も参照

 

・私立の中学高校の取り組みは、ある程度大学と同じ観点で見ていくことができる。つまり、ガバナンスが機能していて、中長期的なコロナ情勢の蔓延を見通したオンライン授業での取り組みを進める学校と、楽観的に緊急事態宣言が解除される5/7以降に対面授業が開始(再開)できると考えている、あるいは何も上から指示や支援をしない無策の学校、下に丸投げの学校と、ガバナンスによって取り組みや意識の差が大きく表れている。
・これまで生徒にタブレットを持たせる、あるいはBYOD を通してICT教育を推進してきた学校は、大学と同様、コロナ情勢の長期化をにらんで取り組みを大きく進めている。ガバナンスの機能とICT教育のこれまでの実績によって、かなりの学校差が生じている。
・公立の中学高校は、校長をはじめとする学校のガバナンスの手前に、教育委員会等の自治体からの指示がある。
地域によるが、公立の中学高校では家庭のオンライン学習環境が十分でないことが多く、またその整備を学校から強く求めることも憚られ、学校のガバナンスで何ともしようがない状況が垣間見える。すさまじい学校(格)差を作り出している。もっとも、このような公立の中高の校長をはじめとする管理職が、その状況下でできることを徹底的に考えている状況も見て取れる。資源不足に負けず頑張ってほしい。
・公立の中学高校は私学と違い、このコロナ情勢で学校の経営的な危機や破綻に陥るという心配をしていないので、オンライン学習環境が貧しく手の打ちようがない場合、教員・生徒への自主的な活動に委ね、組織的マネジメントとしては無策、傍観している状況も少なからず見て取れる。

 

 

②正式な授業開始日はいつ?今教員や生徒は何をしている?
(問題を見る視点)
・今授業が正式に始まっているのか、臨時休業期間なのか。
・教員や生徒は現在の期間をどのようなものと見なし、その上で何をしているか。

 

(学校の状況まとめ)
・巷では、オンライン学習やオンライン授業の優れた取り組みが報道される。しかし、それが正規の授業期間の中でなされるものなのか、臨時休業期間に学習したい人はどうぞ、という程度に与えられる、あるいは紹介される学習課題やオンラインの学習コンテンツなのかの違いを見定めることが重要である。
・塾や教育産業から配信される学習教材・コンテンツがどんなに豊かであっても、その学習が学校教育としての学習に単純に置き換えられるものではない。自分のペースで好きなだけ学べるオンライン学習の利点を否定する必要はまったくないが、学校教育の観点からは、オンライン学習が学習意欲や取り組みに関してかなりの個人差を生み出すことをどこかで頭に入れておかねばならない。オンライン教育や学習論では定番の議論である。
・現時点(4/21)で全国的に緊急事態宣言が発令されており、学校は臨時休業としているところが多いが、実はこのような中でも時間割に沿って授業をおこなっている学校はわずかにある。生徒が登校禁止となっている状況は同じなので、つまりは完全なオンライン授業を行っているのである。これまでICT教育を進めてきた基礎が活かされている。
・大学の状況と同じで、(ア)緊急事態宣言が5/6で解除され、その後3密の制約下ではあっても対面授業が開始(再開)されると見る学校と、(イ)①の状況(上述の今後のコロナ情勢)を見通してリスクマネジメントをとっている学校とでは、現在の取り組み方は相当異なっている。(ア)の学校の教員は、生徒に課題を与えて自宅学習を促しているか、オンライン授業を行っている場合でも緊急事態宣言明けに向けての場つなぎ程度と認識した日々を過ごしている。(イ)の学校の教員も見た目は同じであるが、それ以外に中長期でオンライン授業を実施するべく、教材作成やオンライン授業の進め方を模索している。
・臨時休業期間中に、生徒に毎朝オンラインHRを行い、生徒の健康や心理状態を確認している学校が少なからずある。①(上述の今後のコロナ情勢)を見通して家庭のオンライン学習環境調査を行い、中長期的なオンライン授業の体制を構築しようとしている学校もある。他方で、課題を与えたりオンラインの学習コンテンツを紹介したりするだけで、生徒に対してほとんどコンタクトを取っていない学校もある。言葉通り休業状態である。もっとも、週1回メールや電話で生徒の状況を確認することは行っているところもある。

 

 

③家庭のオンライン学習環境の状況把握や整備の促しは?
(問題を見る視点)
・生徒のオンライン学習環境を確認しているか?
・十分なWiFiやインターネット環境がない生徒への学校の組織的な対応は?
・スマホはあるが、PC・タブレット端末がない生徒をどう見るか?

 

(学校の状況まとめ)
・家庭でのWiFiやPC端末等のオンライン学習環境が十分でない生徒に対して、PCやタブレット、レンタルWiFiを貸し出す学校もあるが、それは例外であり、そこまでできない学校の方が一般的だろう。私学では家庭に整備を求めていくところが多いかもしれない。公立の学校では難しいかもしれない。もっとも、5/6で緊急事態宣言が解除され、対面授業が開始(再開)されれば何とかなると考える学校関係者に、この問題はまだ差し迫っていない。
 ちなみに、大学の中には、通信サービス会社からの50GBまでの無償化や政府からの10万円給付金を利用するなどして、オンライン学習環境を学生自身で整備するように指示しているところもある。
・1人1台のタブレット、教室でのWiFi環境の整備を謳うギガスクール構想が前倒しになっているようだが、このコロナ状況に対応するには施策が一歩間に合わなかった格好だ。箱物行政であるとか教育効果を考えずにPC、WiFiだけ渡してもどうかと政府批判を繰り返すマスコミや専門家が多くいて、腹立たしかったのを思い出している。教育効果は後でついてくるものなので、まず端末、WiFiを導入して授業で使うことを考えよと書いたある教育雑誌への寄稿原稿があったが、編集者ともめてボツになったのもそんなに以前のことではない。まったくという気分だ。
・オンライン授業をある程度予定している学校の中には、生徒の自宅のオンライン学習環境や健康状態、学習意欲などを調査しているところがある。調査は行った方がいい。対面授業でも学生の学習意欲や心理状態をうまく把握できない教員が少なくない中で、オンライン先の生徒の学習環境や心理状態もよくわからずに、放り投げのようなオンライン授業を行っても必ず壁にぶつかる。
・調査実施においてポイントとなるのは、レスポンスのない生徒に対する対応である。通常の調査であれば、ある程度の回答数があればいいのだが、今回はただの調査ではなく、生徒を学校にしっかりつなぎ止め、安心させる目的を兼ねている。新入生はほとんど(まったく)学校生活が始まらない中で、この状況に突入している。本当に自分は中学生・高校生になったのか、学校が自分と繋がっているか、かなり不安になっている生徒が少なくない。このような調査を通して生徒たちを安心させ、レスポンスのない生徒に対して、メールや電話で徹底的に連絡を取る作業まで行うことが期待される。
・オンライン授業を本格的に始める場合、生徒の使用する端末がスマホでいいかは議論が分かれる。
 大学では、授業動画をただ視聴するだけならスマホで十分だが、画面を切り替えながらチャットや課題作成・提出など求められる状況にスマホでどの程度対応できるかを疑問視する教員も多い。しかしながら、携帯で数千字のレポートを書いて提出してくる学生の出現はすでに15年前に始まっており、教員の中高年世代のスマホ使用の状況と一緒に考えてはいけないかもしれない。中学高校ではどちらかと言えば、スマホで十分オンライン授業に対応できると考える教員の声が大きいようである。
・いろいろ考え方はあるが、個人的には多少の問題や理想的な学習はいったん横に措き、当面はオンライン授業を実施していく準備をすることが重要であると考えている。また、どのように進めても、生徒の中にスマホでしかオンライン授業を受けられない者が出てくるだろうから、スマホ対応レベルで教材作成や授業実施を考えた方がいいかもしれない。いずれにしても、コロナ情勢が蔓延してオンライン授業を中長期的に実施しなければならない上でのことである。情勢をしっかり見ていきたい。

 

 

今後の検討の観点
・生徒のオンライン授業へのモチベーションをどうはかるか?維持するか?
・実験や体育・芸術等実技科目をどうするか?
・オンライン教材に関する著作権のガイドラインは教員に示されているか?
・授業料返還要求にどう対応するか?実習費、施設料を返還するか?
・非常勤講師への対応
・留学生への対応
・留学をはじめとする国際交流活動をどうするか?
・その他、、、

 

 

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