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(桐蔭学園)ふり返りのツール by 関谷吉史

*『桐蔭AL通信』の原稿を本ページ用に執筆し直したものです

はじめに 授業におけるふり返りの意義

 アクティブラーニング型授業をおこなう上で、毎回の授業の「ふり返り」をすることはとても大切です。桐蔭学園の教育では主体的な学習者の育成を重視していますが、「ふり返り」の実施はこの点で効果が高いと期待しています。「ふり返り」は「気づき」を生みます。学習内容の確認はもちろん、自分の学びについて省察することで、主体的に学ぶ力が向上すると考えているのです。


 

第1節 ふり返りの事例

 桐蔭学園で、「ふり返り」がどのように実施されているか、いくつかの例を具体的に紹介します。(以下は学内広報誌『桐蔭AL通信』に掲載された教員コメントからの抜粋)

 

図1を参照:

 授業の最後に、キーワードなどを「今回のポイント」欄に書き、これをもとにペアで1分ずつ授業のポイントを発表し合う。意図的にふり返る時間を確保すること、このくらいだったら書いてみようという気になるメモ用紙ほどの用紙であることが大切。
 画像の実例のテーマは「加水分解」。理科の場合、単語を知っていても、それがどういうことなのかを自分の言葉で説明するのはなかなか難しい。教科書の定義をただ暗唱しても理解したことにはならない。自分の言葉で説明するトレーニングに役立たせたいと思った。
 感想欄には、理解が浅くてうまく説明することができなかったなどという感想もあり、こうしたことに気づいたことはALならではの成果といえる。加水分解については高2でさらに詳しく学習するので、この日の感想をそのときに思い出してもらえればと思う。

(高1・理科)

 

              

図1

 

図2

 

 

図2を参照:

〔工夫したところ〕

1.活動中に書く部分と、最後の5分(下の枠内)で書く部分を分けた。集中を切らさず時系列でふり返りができるし、授業進行を妨げない。

2.ウォームアップの勝敗を記入できるので、気合いが入る。

3.「笑」の字5段階評価。自己評価が5になったら笑顔を書ける。自分の好きな顔(トーマス、ドラえもん……)を書いてよいことにしている。

4.蓄積したふり返りを見られるようにしたくて、ノートに貼ることを義務付けた。ポートフォリオみたいな「ふり返りシート」が理想。

〔ふり返りシートやってみて〕

 ハンコ押しは疲れる。溜まると机がごちゃごちゃになる。授業時間を使いたくないので、小テストとともに授業3分前に返却開始。大変だ。でも、ただ「ノートを取れ」では、何が重要か生徒は分からないので動かない。そこで私は「ふり返り」をするのと同時に、板書サポートをしている。学期の最後にノート回収する時に結構感動する。ただ「板書しろ」と言って書かせていた頃と比べると倍以上の字の量。

(中2・英語)

 

図3を参照:

 冊子にしている教員も多いが、私はシートをめくる手間を省きたくて、生徒が上に糊づけして重ねていく方式にした。毎授業シートを配布するが、これはそれほど手間ではない。
 シートは小テストの後に配布するので、その日の授業に向かう姿勢がそれぞれのなかにイメージされていく。ふり返りを見ると、授業内容の確認はもちろんだが、それ以上に次回の授業につながる材料がたくさんあり、ここから着想を得て授業を展開することが多くある。
 とりあえずやってみようかな、という軽い気持ちで始めた。自分なりの負担が少ないと思うような形で扱ってみたらよいのではないか。

(高2・国語)

    図3

 

 現在中2女子のみですが、毎回ふり返りノートを配布し、書かせ、回収し、チェックして次回にまた戻して記入をさせています。一回分はB5の半分の量で、日付・タイトル・学習態度(5~1に〇)、学んだことや感想を数行書くようになっています。 
 すでに使っていらっしゃる方のものを参考にしました。表紙に「学ぶことは成長すること 今日学んだことをふりかえろう」と載せましたが、これもそのままお借りして勝手に使わせていただいています。
 生徒は主に授業の中身の感想を書いてくれています。中学生なので、発見や驚きを素直に書いてくれます。中には、自分のノートをじっくり見直し、その内容を2~3行に要約して書いている子もいます。今、学習したばかりのことをすぐに復習していているという感じです。知識の定着にすごくいい方法だと思います。
 ふり返りのノートは授業開始後、板書中に配布し、授業終了前に、声をかけて書いてもらっています。ほぼ全員が提出するまで、休み時間少し教室に残って待っています。生徒は1分くらいで書いています。
 回収後のノートに検印し、ポイントに赤い線を引き、必要なら短いコメントを書いていますが、30人もいないクラスですので、1クラス5分くらいで点検はおわります。生徒の感想を読むと私もいろいろ気づかされ、勉強になります。

(中2・社会)

 

 桐蔭学園では、決められた書式のふり返りシートはありません。上記のふり返りシートは、各教員が自分の授業スタイルに合わせて作成したものです。それを他の教員が見て、そのまま使ったり、データを受け取ってアレンジして使ったりしています。小テストやワークシートの一部を「ふり返り欄」として使用するといった形もあります。
 また、同じ教員でも、学年やクラスに応じて書式を変えていることがあります。よりよい授業をおこなうこと、生徒がよりよく学ぶことを目指して、ふり返りシートの形は考えられています。

 

 

第2節 フィードバックのしかた

 何らかのフィードバックがなければ、多くの生徒はすぐに「書かなくてもいいや」となります。また、そもそもはじめのうちは多くの生徒が「何を書いていいかわからない」と言います。これでは学習効果が上がりません。逆に、ふり返りシートの記入内容が良質になるのは、生徒の成長の証。それを実感することは教員にとって喜びです。
コメント記入……生徒の記入内容を見て、一人ひとりのシートに、あるいは何人かのシートにコメントを記入したり、線を引いたりする方法。もっともオーソドックスなやり方です。自分ひとりに向けてコメントをしてくれることに生徒は喜びを感じるでしょう。
授業で紹介……パワーポイントのスライドにして、次の授業で紹介する方法。生徒は紹介されることで自信を得たり、張り合いを感じたりします。前回の学習内容の復習もできます。さらに、生徒の記入内容を次の授業の学習につなげることで、授業の連続性を確認したり、生徒の参加意識向上をはかったりすることができます。
ふり返り冊子……一綴りの冊子に一定期間のふり返りがまとまっていると、その期間全体を見渡した復習や、自己の成長の確認に役立ちます。

 

 

最後に

 ふり返りをすると、自分が理解していること・理解していないこと、授業での疑問点、次の授業へ向けての課題などを自分で意識化することができます。自分の状態を客観的に把握し、自分の成長に向けて取り組むべきことを自分で発見し、実行する。そしてまた次の取り組みへとつなげていく。このような自ら学び続ける力は、生徒たちが将来にわたってたくましくしなやかに生きていくために必要な力です。

 

(文責:関谷吉史 プロファイルはこちら

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