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(講話)ワークシートベースのアクティブラーニング型授業にする

要点

 

 

1.はじめに

アクティブラーニング型授業を「個-協働-個の学習サイクル」(「(桐蔭学園)個-協働-個の学習サイクル」ならびに図表1を参照)にしていくことは、このウェブページではさまざまなところで提案してきた。ここでは、これに加えて、最初の個の学習から協働学習に入る手前に、ワークシートを用いたほうがいいこと、すなわち「ワークシートベースのアクティブラーニング型授業」を提案する。

 


図表1 個-協働-個の学習サイクル
*「(桐蔭学園)個-協働-個の学習サイクル」より。

 

 

2. ワークシートベース

図表1の協働の学習(グループワーク)の手前に、ワークシートを用いたワークを入れる方がいい。これで外形としての個-協働-個の学習サイクルを、学びとしての内化-外化-内化の学習サイクル(「(用語集)内化・外化」を参照)に落とし込むことができる。

図表2は、静岡市立高等学校の川嶋一枝教諭の授業で用いられたワークシートである。[1]個のワークとして自分の考えを書く。それをもとにペアワークをおこない、そこで気づいたことを[2]でメモをする。授業の最後には、[3]にふり返りを書くという構造になっている。ワークシートをこのように構造化すると、自分の考えを[1]で必ず外化しなければならない。ペアワークをおこなった後には[2]で必ず気づきを書かなければならない。[3]のふり返りも然りである。

図表1でいきなり真ん中の協働の学習へ行くと、一部の生徒だけが議論をして、他の生徒は聞いているだけということが往々にして起こる。しかし、ワークシートの[1]に自分の考えを書いてから議論をおこなうと、自分の考えを他者に伝えるところまではすべての生徒が必ずできる。もちろん、議論をするからには、自分の考えと他者の考えを比べて同じところと異なるところを検討してほしい。みんなで考えを出し合って、みんなが同じ考えだったというのは課題の与え方が悪いわけだが、そうでなければ必ずズレは出てくるはずである。ズレの中身を検討して新たな気づきや発見をしてほしい。

「何かに気づきなさい」「発見しなさい」と言っても、それですべての生徒が気づきや発見をできるわけではない。教師がそれを学習目標とするならば、ワークシートで構造化して、ズレを通しての気づきや発見をワークシートに書かせたほうがいい。これが図表2の[2]の意味である。

 


図表2 ワークシートで個-協働-個の学習サイクルを構造化1
*川嶋一枝教諭@静岡市立高等学校(現代文 高校2年生)

 

もう一例、長崎東中学校・高等学校の丸田修也教諭の授業で用いたワークシートを紹介しよう(図表3)。ワークシートには、「酸性河川の問題点とは?」「この方法の問題点は何か?」「群馬県は、どのようにして湯川の水質改善に成功しているのか?」と、この時間で扱われる3つの問いが与えられている。生徒は、それぞれの問いに対して「自分の考え」を出し、グループワークをしながら、あるいは終わってから「グループワーク時のメモ」に考えたことを書いていた。

図表3は、ワークシートに書いたものをシェアして議論している場面である。図表1の協働の学習に相当する。「グループワーク時のメモ」というゆるやかな教示では生徒はメモをしないのではないかと、生徒たちの作業の様子を見て回ったが、意外にけっこう書き込んでいて感心した。だが、多くの学校では、グループワークをして何を書くかをもう少し構造化して教示した方がいいかもしれない。

 


図表3 ワークシートで個-協働-個の学習サイクルを構造化2
*丸田修也教諭@(長崎県立)長崎東中学校・高等学校(理科 中学3年生)

 

 

 

 

 

図表4 ワークシートに書いたものをもとに議論
*丸田修也教諭@(長崎県立)長崎東中学校・高等学校(理科 中学3年生)


 

 

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