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(用語集)内化・外化

第1節 アウトプットとしてのアクティブラーニング

アクティブラーニングとは、講義一辺倒の授業を脱却するという文脈で誕生し、「聴く」という受動的な学習を乗り越えて、学生自身の活動(書く・話す・発表するなど)を学習に組み込むことである。インプットとしての「聴く」を受動的学習と操作的に定義するところから始まり、その受動的学習との対比において、アウトプットとしての「書く」「話す」「発表する」などの活動を「アクティブ」な学習と見定めたのである。活動は、具体的には「ペアワーク」「グループワーク」「プレゼンテーション」などとも呼ばれる(詳しくは「(理論)大学教育におけるアクティブラーニングとは」を参照)。

ほかにも「アクティブ」の定義のしかたはあっただろうが、少なくとも今世の中でアクティブラーニングと呼ばれて普及しているものは、このアウトプットとしての「活動」(書く・話す・発表するなど)の考え方にしたがって提起されている。アクティブラーニングへの代表的批判として「活動あって学びなし」や「活動主義」といったように、「活動」という言葉が用いられるのも、このことと密接に関連している。

 

 

第2節 内化・外化の定義

内化・外化は、一般的には「インプット」「アウトプット」とほぼ同じ意味で用いられている(たとえば、エンゲストローム, 2010; 松下, 2015; 森, 2016)。学術の世界でも厳密に定義して用いられているわけではない。本ウェブサイトでは、次のように定義してこれらの用語を使用する。

 

アクティブラーニングがどのように説明されようと、アクティブラーニングの最大のポイントが、理解したこと、考えたこと、疑問に思ったこと、気づいたことなどを“書く”“話す”“発表する”の活動によって外に出す、すなわち「外化」であること(注1)を確認しよう。アクティブラーニングといえば、グループワークやプレゼンテーションといった他者との協働の学習と思う人が多いが、それは正確ではない。グループワークやプレゼンテーションは外化の一つであり、アクティブラーニングには“書く”という外化の活動もある。これは個の学習としてなされるものである。

 

(注1)講義一辺倒の授業を脱却する文脈でアクティブラーニングを定義するもの(ボンウェル・エイソン, 2017; 溝上, 2014; 文科省の質的転換答申など)は、書く・話す・発表する等の活動への関与を、アクティブラーニングの能動性の意とする。ポイントは「外化」にあると理解される。溝上(2014)では、アクティブラーニングを「一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う」と定義している(「(理論)大学教育におけるアクティブラーニングとは」を参照)。

 初等中等教育における新学習指導要領での「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点)」(「(理論)初等中等教育における主体的・対話的で深い学び-アクティブ・ラーニングの視点」を参照)も、たとえば主体的な学びだけを見ると必ずしも外化に相当しない学びはあるが、全体的には、書く・話す・発表する等の活動を伴う外化を指すものが多い。

 

外化は内化に対応し、完全に一致するものではないが、おおよそ個-協働-個の学習サイクル(「(桐蔭学園)個-協働-個の学習サイクル」を参照)を置き換える学術用語として用いられている。個人か協働(集団)かを強調する場合、認知情報処理の観点から外から内へ、内から外へを強調する場合を使い分ければよい。

 

 

文献 

ボンウェル, C.・エイソン, J.(著) 高橋悟(監訳)(2017). 最初に読みたいアクティブラーニングの本 海文堂

エンゲストローム, Y.(著) 松下佳代・三輪建二(監訳)(2010). 変革を生む研修のデザイン-仕事を教える人への活動理論- 鳳書房

松下佳代 (2015). ディープ・アクティブラーニングへの誘い 松下佳代・京都大学高等教育研究開発推進センター(編)ディープ・アクティブラーニング-大学授業を深化させるために- 勁草書房 pp.1-27.

溝上慎一 (2014). アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換 東信堂

森朋子 (2016). アクティブラーニングを深める反転授業 安永悟・関田一彦・水野正朗(編)アクティブラーニングの技法・授業デザイン 東信堂 pp.88-109.

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