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アクティブラーニング型授業で獲得する学力の3要素

松下聖子(名桜大学人間健康学部看護学科)

名桜大学人間健康学部看護学科のウェブサイト

森朋子のコメントは最後にあります。

対象授業

 

 

第1節 はじめに

小児看護学は、小児看護学概論(2年次後期・2単位)、小児看護方法論(3年次前期・2単位)、小児看護実習(3年次後期・2単位)、総合実習(小児看護領域:4年次後期・2単位)で構成されている。関連科目には、病態治療学Ⅲ(小児疾患)、生涯発達論、家族看護学がある。いずれも2年次後期の科目である。小児看護学概論は、小児看護の対象である子どもの理解をうながすために、子ども観の変遷や子どもの人権と看護、子どもの医療と倫理などについて学ぶ。また、子どもの成長発達について、発達特性、成長発達に影響する因子、成長発達の評価等を理解し、子どもと家族に対する成長発達に応じた支援及び健康増進のための支援について学習する。学習目標は、次の4点である。①社会の変化と子ども観の変遷について理解する。②小児の成長発達(主に身体的、生理的発達)について理解し、健康の維持増進のための看護を考える。③小児と家族を取り巻く環境と生活について理解する。④子どもの権利擁護について、事例を通して考える。授業計画は、表1に示す。成績評価は、ミニテスト:4点×10回=40点、期末テスト:50点、ポートフォリオ:10点の100点満点である。

アクティブラーニング型授業を実施するにあたり、授業ガイダンスで、①お互いに教え合う、②お互いの顔・目を見る、③スマイル、④適度にうなずくなどのペアワーク・ディスカッションの原則を説明し、ペアワークを体験させた。そして「なぜ、今、アクティブラーニングなのか」を伝えた。今年度より、学生の能動的学習を促すために小児看護学概論にアクティブラーニング型授業を展開した。今回、「予防接種」の授業を振り返り、課題を検討し、授業改善を行っていきたい。

 

表1 授業計画

月日 内容
1 10.02 ガイダンス
小児看護のめざすところ 小児看護の変遷:(テキストp4~8、p15~18)
2 10.09 小児と家族の諸統計(ミニテスト):(テキストp8~15)
3 10.16 家族の特徴とアセスメント:(テキストp154~166)
4 10.23 小児に関連する法律、施策(ミニテスト):(テキストp170~183)
5 11.06 小児看護における倫理:(テキストp18~25)
6 11.13 小児看護の課題:(テキストp25~28)
7 11.20 予防接種(ミニテスト):(テキストp183~190)
8 11.27 子どもの成長・発達(ミニテスト):(テキストp30~50)
9 12.04 新生児期の子ども(ミニテスト):(テキストp68~85)
10 12.11 乳児期の子ども(ミニテスト):(テキストp85~98)
11 12.18 幼児期の子ども(ミニテスト):(テキストp100~116)
12 12.25 学童期の子ども(ミニテスト):(テキストp116~129)
13 01.15 思春期・青年期の子ども(ミニテスト×2):(テキストp132~146)
14 01.22 倫理的課題(ディスカッション準備)
15 01.29 倫理的課題(ディスカッション)
16 02.05 期末試験

 

 

第2節 小児看護学概論「予防接種」の授業展開

授業は、事前課題⇒授業⇒ミニテスト⇒事後課題の流れに沿って展開した。

1.事前課題

授業範囲をテキストで予習できるよう、用語の整理・テキストの内容の穴埋め問題・重要な内容の記述問題を提示した。事前課題の回答は、授業の中で確認できるように進めていった。

 

2.授業の実際

展開 時間 学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入 10分
  1. 前時の振り返り
    前回の授業のミニレポート&フィードバックに記載された質問に答える
  2. ウォーミングアップのワーク
    自らが体験した予防接種について
  •  
     
  • 予防接種について想起させる。
  • 個人ワーク、ペアワークで意見交換をさせる。
展開 65分
  1. 予防接種って何?
    ・ 二次応答
    ・ 予防接種の原理
    ・ ワクチンの効果
    ・ 予防接種の目的
  •  
  • 生化学や薬理学などの既習科目との関連づけ、免疫反応について想起させる。
  •  
  • 予防接種の原理やワクチンの効果から予防接種の目的を個人ワーク・ペアワークで考えさせる。
  1. 予防接種の歴史
    ・ 予防接種の歴史
  •  
  • 予防接種の歴史について、背景、年代、内容に分けて整理したプリントを配布。プリントには誕生日欄を設け、自分や両親、友達などの誕生日を記入できるようにし、覚えやすいようにした。
    スライドには、最重要ポイントを示す。
  1. 予防接種の現状
    ・ 予防接種法の改正
    ・ 定期・任意予防接種スケジュール
    ・ ワクチンの同時接種
    ・ 予防接種不適応者・要注意者
  •  
     
     
  • ワクチンの同時接種では、動画を視聴させ、イメージ化させる。
  • 実習での様子を説明し、授業と実習をつなげる。
  1. 副反応と健康被害救済制度
    ・ 予防接種の副反応と有害事象
    ・ 予防接種健康被害救済制度
    ・ 事例検討
    ・ もう一度、予防接種って何?
    ・ 予防接種と看護
  •  
  • 予防接種により重症な副反応を起こした事例を提示し、予防接種の効果とリスクについて考えさせる。
  • 予防接種の効果と副反応について考えたうえで、再度予防接種の意義について考えさせる。
  • 予防接種の意義や効果と副反応から、どのような看護が必要か、ペアワークで意見交換する。
まとめ 15分
  1. ミニテスト&採点
  2. ミニレポート&フィードバック記入
  3. 次回の予告
  • ミニテストと採点で知識の定着を図る。
  • ミニレポート&フィードバックで、学びを整理する。

 

 

①学習目標の提示

学習目標:
1.予防接種について理解する
2.予防接種の歴史について理解する
3.予防接種の副反応と健康被害救済処置制度について理解する
を明示し、本時の授業で何を学ぶのかを意識づけた。

 図1 学習目標の提示

 

②予防接種と自己との関連づけ

ウォーミングアップとして、「みなさんはいつ、どんな予防接種を受けましたか?」と問いかけ、個人ワーク1分で学生の予防接種について想起させ、ぺアワーク2分で意見交換を行った。ワークは時間を共有するため、タイマーを表示した。

学生は、課題に対してレジュメやノートに個人の意見を書き、その後ペアワークでは活発に意見交換をしていた。

 図2 ワーク時間の共有

 

③既習学習との関連づけ

予防接種の原理を理解するため、免疫反応について想起させた。

 

④主体的な学習

予防接種の目的や看護役割について説明するのではなく、学生がワクチン接種の効果を理解し、そのうえで予防接種の目的を導き出すよう、ワクチンの効果やワクチン接種を中止するとどうなるのかといった予防接種に関する現状を発問ベースで講義を行った。その後、個人ワーク、ペアワークを実施した。


     発問ベースの講義         個人ワークの様子

 


     ペアワークの様子            発表
図3 授業のさまざまな場面

 

⑤動画の活用

予防接種の同時接種について、イメージするため動画を用いて、その場面を視聴させた。動画では、1回に3種類の予防接種を乳児に実施する所を流した。乳児が泣きそうで泣かない場面や大泣きする場面を全員が見ていた。授業開始から40分経過し集中が途切れる時間帯であったため、動画の視聴は効果的であった。

 

⑥事例検討

子宮頸がんワクチンで重篤な副反応に苦しんでいる17歳の少女について書かれた記事を紹介し、少女に何が起こったのか、予防接種とはいったい何なのかを考えさせた。そのうえで、予防接種時の看護の役割について考えさせた。さらに、再度予防接種とは何かを考えさせた。授業のまとめになる部分なので、学生はこれまでの授業の中から回答していた。

ここでは、事例を通して予防接種には大きなリスクがあることも理解できるので、予防接種に賛成派、反対派に分かれて意見交換を行ったり、予防接種に対する考えが授業開始前とどのように変化したのかなどのディスカッションを入れたりしても良かったのではないかと思う。

 

3.ミニテスト

授業の最後に知識の定着を図るため、8問のミニテスト(1問0.5点)を実施した。ミニテストは、主に事前学習の内容から出題した。ミニテストは、○×式で、5分程度で実施する。全員が回答した後、隣の学生とミニテストを交換し、採点を行う。採点は、スライドに正解と解説を示して行う。ミニテストは、10回行い成績評価の一部となる。


図4 ミニテスト(左)と採点(右)

 

4.事後課題

事後課題は、「予防接種を行う時の看護師の役割について」400字程度でまとめさせた。暗記ではなく、授業内容を再度考えるようレポート形式とした。

 

5.その他

ポートフォリオには、事前課題、事後課題、授業の資料等をファイルし、3年次後期の小児看護実習の時に活用する。

 

 

第3節 課題

  1. ペアワークで行う時の課題が、理解の確認に留まらないよう、思考する課題を取り入れる必要がある。
  2. ペアワーク後の発表は、その場での発表であった。ペアワークでの思考過程がわかるような発表方法を検討する必要がある。
  3. 教授パラダイムの枠を踏まえつつ、その枠を超えた学習ができるよう、答え探しの発問にならないよう発問を工夫する必要がある。さらに学生の答えを拾う時、学生の答えが次の思考につながるような拾い方をする必要がある。また、枠を超えることへの対応力も身に付けたい。
  4. 時間の都合で最後のワークは個人ワークをせず、いきなりペアワークになってしまった。教材研究をより深く行い、この授業で何を学ばせるのか、何を考えさせるのかをより明確にし、個→協働→個のサイクルを壊さないように授業設計を行う必要がある。
  5. 授業に関する資料は、授業開始前に学生が自分で取っていく形になっているため、授業開始前にすべての資料が学生の手元にある。手元に資料があることで、授業の進行に関係なく資料に目を通す学生もいる。今回、事例検討に使用する資料も授業前に配布していたが、事前課題として事例を読ませて、授業を受け、事例検討につなげるなどの工夫をし、授業の中で展開される学習内容につながりを持たせることも必要であった。
  6. 授業時の座席は、学生の自由としているため、いつも同じ所に同じ学生が着席している現状がある。ペアワーク時もいつも同じメンバーで行うので、馴れ合い的な場面もみられる。学生が誰とでも話し合いにより学びが深められるよう、授業ごとに座席を変えるなどの工夫によりペアワークのメンバーの調整が必要である。

 

 

第4節 おわりに

学生が、事実の理解や知識の獲得に終わるのではなく、既習学習や自らの経験と関連付けて考えたり、新たな疑問を生み出したりするような深い学習ができるよう、どのような問いが必要なのか、どのように問えば良いのか、「問い」を検討していきたいと思う。そして、今回明らかになった授業の課題をディプロマポリシーとの整合性を図りながら、改善していきたい。

 

 

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プロファイル

松下 聖子(まつした せいこ)@名桜大学人間健康学部看護学科 教授


  • 学びの主人公である学生が、仲間とともに学びを深め、それを自分たちの言葉で表現し、他者に伝えていく授業をめざし努力していきたいと思います。

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