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(AL関連の実践)【中学校/理科】振り返りを通して「学びの質」を分析する力を育成する

井上裕子(帝塚山学院中学校高等学校)

帝塚山学院中学校高等学校のウェブサイト

溝上のコメントは最後にあります

対象授業

 

 

第1節 授業の目標

本時は、「個人」「ペア」「グループ」「全体」での学習を通して、酸化還元反応について原子や分子のモデルと関連付けながら理解させること、予想をさせてから観察を行い、その結果を分析して解釈させることを目標としている。 その過程で、生徒たちは「授業記録」をつけ、自分の「学びの質」を分析することができる機会を設けている。

また、学ぶ内容は基礎的ではありつつも、日常生活や社会に深く関わっている。科学的な知識や考え方を学ぶことは、個人の人生をより良いものにし、社会の発展や課題の解決に寄与する。 日常生活との関わりに目を向けさせながら、理科を学ぶことの意義が伝わるよう心がけている。

 

 

第2節 授業の流れと活動の目的

(1)学習内容を提示し、目標設定をさせる。(5分) (2)前時に行った酸化銅の炭素による還元実験のふり返りを行い、酸化還元反応について説明する。(20分) (3)二酸化炭素中でのマグネシウムの酸化(20分)

 

(4)銅、炭素、マグネシウムを酸化されやすい順に並べる課題に取り組ませる。(3分)

 

(5)本時の学習内容のふり返りを行い、記録するよう指示する。(2分)

 

 

第3節 アクティブラーニング型授業への移行に伴う工夫

(1)評価基準について

「学力の三要素」の視点から、授業内の活動を以下のように分類し、それぞれの力が養えるような授業を目指す。生徒たちには「どのような力がついたのか」を自己評価させ、 授業態度、提出物、定期試験と併せて総合的な評価を伝えている。

 

A:知識・技能

①化学変化を原子や分子のモデルを用いて説明できる。

②化学変化を化学反応式で表せる。

③変化に関する原理・法則を理解し、知識を身に付けている。

④実験器具の基本操作を正しく行い、結果を記録することができる。

「知識・技能」の評価項目については、単元ごとに授業プリントの冒頭に目標として示している。新しい単元に入る際に、生徒に身に付けてほしい項目として伝え、 単元が終わった際に身に付いたか自己評価させている。また、定期試験で出題し、定着しているか確認している。

 

B:思考力・判断力・表現力

①実験方法を立案できる。

②観察・実験の結果を原子や分子と関連付けて解釈できる。

③観察・実験の結果から化学変化における物質の変化やその量的な関係に気付く。

④観察・実験の結果・考察を基にレポートを作成し、発表できる。

「思考力」「判断力」「表現力」は、実験レポートに予想、考察、自己評価の欄を設けて記入させ、提出された実験レポートと授業時間内の発言や発表を評価している。

 

C:主体性・多様性・協働性(学びに向かう力・人間性)

①化学変化と原子・分子に関する事物・現象に関心をもち、進んで観察・実験を行う。

②班で協力して観察・実験を行う。

③他者の考えを共感的に聞く。

④自分の考えと他者の考えの違いを認識し、より深い考察を行う。

「主体性」「多様性」「協働性」については、授業態度を観察し、声かけを行っている。

 

(2)個の活動での工夫・成果

観察・実験を行う前には予想を、観察・実験後には考察を根拠とともにプリントに記入させる。記入を促すために、記入後にペアワークやグループワーク、発表の時間をとり、その準備としての必要性をもたせている。 望ましい行動を引き出せるように、プリントに自己評価の欄を設けている(図表7 プリントの自己評価)。

プリントに記入しないまま、正解の提示を待つことがないように、過去の偉大な科学者たちにも間違いはつきものだったことや、正解よりも間違いから多くを学べることを伝え、考える姿勢や自分の考えを記入していることを評価する。 経験や実験結果、学習内容を根拠に予想や考察を行うことは、科学的に考える練習になる。同時に、その後の協働学習の準備ができる。

 

(3)協働活動での工夫・成果

本校の生徒たちの特性として、指示をすれば積極的に協働活動を行うので、有意義な協働活動になるよう、教員側で時間と議論の方向性をコントロールしている。時間管理のために、 各活動の時間を設定し、残り時間を伝えることで時間配分を意識させている。議論を正しい方向に誘導するため全体に聞こえるように、着眼点の良さをほめたり、見逃している点を指摘したりする。

こういった意識的な指導を通じて、生徒たちは時間配分を考え、目標に向けた効率的な協働を行うようになる。ある班の着眼点の良さを指摘することで、他の班も積極的にそれを取り入れようとして、 班を越えた学びに発展することも多い。

 

 

第4節 今後の課題

現在、以下の3点を課題として取り組んでいる。

これらの課題の解決のためには、生徒が各自で家庭学習を行うことが欠かせない。授業では、講義時間は最小限に抑えるよう、プロジェクターでスライドを映し、説明を行っている。 生徒には自分の考えや話し合いで気付いたことを多く書かせるようにし、知識的な内容は穴埋め式のプリントに重要事項のみ書かせている。 適切なタイミングで復習して授業で学んだ知識を覚えることや個人で考えることは各自で家庭学習を行うよう指示し、宿題という形をとっている。 提出させた宿題にスタンプを押したり、声かけを行ったりしている。

今後、生徒の興味・関心を喚起するように教材や発問を工夫し、家庭学習に取り組む意義や有用性に気付かせ、生徒がより自発的に家庭学習に取り組もうという気持ちを育んでいきたい。

 

 

溝上のコメント

 

 

プロファイル

井上裕子(いのうえ ひろこ)@帝塚山学院中学校高等学校・理科


  • 一言:授業改善の取り組みのひとつとして、アクティブラーニングに取り組んでいます。発問に対する生徒の様々な答えや反応を想定して授業準備を行い、授業中は自分自身の行動を含めて全体を俯瞰的にとらえるように意識しています。そうすることで、期待した学習姿勢や効果を生徒から引き出せる授業を目指しています。

 

 

 

 

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