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(AL関連の実践)【高校/英語】アクティブなインプット学習から協働学習につなげる授業(2)

乾菜摘(帝塚山学院中学校高等学校)

帝塚山学院中学校高等学校のウェブサイト

溝上のコメントは最後にあります

対象授業

 

 

第1節 はじめに

高校2年から始めたスピーキングの授業※も1年が経ち、生徒たちは課題や機器の操作にも慣れ、より授業を効率的に運営できるようになっています。 2年次は文法の定着に時間を割くことが多かったのに比べ、3年ではスピーキング活動を中心に授業をしています。

※「(AL関連の実践)【高校/英語】アクティブなインプット学習から協働学習につなげる授業」
http://smizok.net/education/subpages/aAL_00008(Inui_Tezukayama).html

 

 

第2節 1年間の振り返りと成果

(1) スピーキング力の向上

授業の前半ではリスニングと音読でトピックの導入をし、後半ではそのテーマに沿ってスピーキングの準備をします。時にはインターネットで情報を検索するなど、 より内容の深いスピーキングに取り組んでいます。授業の終盤ではクラスの前で発表をさせます。発表の機会を設けることで、人に伝えることを意識したスピーキングが出来上がります。 クラスメートに聞かれることを意識すると、難しい単語や専門用語、回りくどい表現を避けるようになります。辞書に頼りきりになることなく、より身についた実際の力に近い英語で考えるようになりました。

 

  図表1 授業風景

 

(2) 聞く態度の育成

発表の際にもう1つ意識させているのが聞く側の姿勢です。この発表が罰ゲームのように思われては意味がありません。発表者が気持ちよく発表できるように、いい環境を作ることが大切です。 発表の後に必ず教員側から質問を投げかけます。いま聞いた発表のキーワードを挙げさせ、それらを板書して内容を復習させます。覚えたての文法を使ったり、 いい表現が出てきたりした場合にはそれも板書し、他の生徒へ紹介します。同じ教室で学んでいるクラスメートから新しい表現を学ぶことができる。これは教師が長々説明して教えるよりも効果があります。 生徒の発表を1回で聞き取るにはかなりの集中力がいります。中には発音が間違っていたり、表現があいまいな生徒もいます。それでも質問が投げかけられるので、何とか単語だけでも聞き取ろうとします。 こうした聞く姿勢をしっかり作ることで、発表の時間が罰ゲームではなく、学ぶ機会へと変わります。

 

(3) 全員のアウトプットを増やす環境づくり

これまでの英語の授業はどうしても一対多数で、生徒の授業への参加度に差が出がちでした。また、インタビューテストをする際も1人1分として40分以上かかってしまいます。 この授業ではパソコンと録音ソフトという最小限のICTを活用し生徒の授業への参加度を平等に、そして最大限に引き上げることが目的です。発表ができなかった生徒も、 それぞれのスピーキングを録音し授業後に教師が評価をします。毎回の発表と評価で緊張感を持って授業に取り組んでいます。スピーキングの力は話す機会が多ければ多いほど伸びます。 これまで1年間、毎時間スピーキング課題をこなしてきたおかげで、英語を話すことへの抵抗はかなり少なくなりました。

 

  図表2 パソコンを使って検索・録音

 

 

第3節 他の授業とのリンク

この授業を行う中で、英語以外の授業で学んだ知識やテクニックをスピーキングに生かす生徒が増えてきたという思わぬ成果がありました。

例えば日本の世界遺産を紹介するテーマでは、ちょうど地歴公民科の授業で触れたところだったので、授業が盛り上がりました。生徒へはスピーキングの条件として、 ①その世界遺産が何なのか、②世界遺産登録年度、③比較級を使った表現を盛り込むように伝えましたが、地歴公民科の授業で覚えたての知識がたくさんあったので、 この条件以外にもたくさんの情報を盛り込んでくれました。

また、「英語表現」という授業では、ネイティブ講師による授業が行われています。これまではすぐに白旗をあげ日本人教員に和訳を求めていましたが、今では自分でネイティブ講師に、 スピーキングの授業で習った表現を使ったりしながら、必死に英語で表現しようと努力している姿を多く見かけるようになりました。

回を重ねるごとに、発表の仕方にも工夫が見られるようになりました。第一声でいかに聴衆の注意を引きつけるかが発表のポイントになります。発表を行う授業は英語以外でもあり、 他の授業で使った表現を英語に変えて、時には聴衆に “Do you know ~?” と質問を投げかけることもあります。自分の授業で教えていないことも他の先生方の授業からどんどん取り入れてくるので、 毎回の発表が予想外で楽しみです。

 

  図表3 生徒の発表の様子

 

これまで別々に思えていた授業が、スピーキングの訓練を通じて生徒の頭の中で有機的に繋がっていくように感じます。2年生の8月に受験したGTEC Speaking Testではグレード3だったので、 これらの成果を客観的に数値で表すべく、今年の8月にはグレード4の達成を目指したいと思います。

 

 

溝上のコメント

 

 

プロファイル

乾菜摘(いぬい なつみ)@帝塚山学院中学校高等学校・英語


  • 一言:この授業を通して、生徒が想像以上にたくさんの刺激を受けていることに気付きました。アクティブラーニングは生徒たちに学び合う機会を与えてくれます。普段の試験だけでは測ることのできない、生徒のそのような学び、成長を感じ取ることができました。社会では、人に伝える力、コミュニケーション能力が求められています。この学習が生徒たちの将来の進路に少しでも役立つことを願っています。

 

 

 

 

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