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出口善明(清教学園中・高等学校)
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溝上のコメントは最後にあります
本時の授業では、室町文化が民衆へ、そして地方へ広まったことにより、日本の伝統文化の基礎となったことを理解させる。また、キリスト教と鉄砲が伝来した理由について考えさせ、
大航海時代に影響を与えたイスラム世界の発展について理解させる。
一方、年間の授業を通して、知識・理解だけではなく生きる力(学力の三要素)である思考力・判断力・表現力と主体性・対話性・多様性を生徒が習得することを目標としている。 そのため、KP法(紙芝居プレゼンテーション法)を活用し、授業目標、ルール、授業の流れなどは毎回ホワイトボードに貼り出している(図表1・2)。
ペアワークには個→協同→個のサイクルを活用している。また、ペアワークはLITE(Learning in Teaching 教えることで学ぶ)の方法で行っている。流れは以下の通りである。
① 1分間で生徒が各自授業用ノートを復習する。
② あらかじめ決まっているペアでの話し合いにより説明者を決め、確認のため説明者には手を挙げさせる。
③ 2分間で説明者がペアに前時の内容(あらすじ)を説明する。
ペアワークで参照していいのは授業ノートの右側半分(自分のメモ)のみとしている(図表3)。自分のメモだけを見てあらすじを話すことで、有意味学習(深い学び)につながると考えられるからである。話し方や聞き方についてはペアに正対すること、 相手の目を見て聞くことについて指導している(図表4)。復習やペアワーク中には時間を前に表示し、生徒に時間の感覚を身につけさせるよう心掛けている(図表5)。
(2) 展開1(講義→ペアワーク 約25分)
①プリント穴埋め(5分)
授業用ノート左側の授業プリントの空欄穴埋めを行う。プロジェクターを使って授業プリントをスクリーンに映し出す。板書をしないことにより、講義の時間を短縮している。
②講義(15分)
授業プリントや資料集を、iPadアプリ「MetaMoJi Note」を使用し、AppleTVでスクリーンに映しながら講義を行う。講義は生徒の集中力を途切れさせないために1回15分程度にしている。生徒はノートの右側にメモを取りながら聞く(図表6)。講義後にはペアワークがあり、ペアワークでは自分のメモしか見ることができないので、生徒は1授業あたりA4用紙1枚ほどメモを取る。講義をしながら、授業プリントの説明している部分をスクリーンに映すことで、視覚的補助をしている(図表7)。 一方、講義では大学入試レベルの深い話まで取り入れることで、生徒の興味・関心を引くようにしている。講義時間の短縮とペアワーク時間の確保のために、板書や生徒個人に対しての質問は基本的に行わない。
③ ペアワーク(5分)
講義の内容について、「1.前時の復習」と同じ方法で復習→ペアワークの順に行う。
(3) 展開2(講義→ペアワーク 約25分)学習内容を変え、①~③の方法を繰り返す。
授業の進度があるので、2分のペアワークを最大でも3回取り入れるのが精一杯である。アクティブラーニングを取り入れる時間が少ない中でも、生きる力(学力の三要素)の習得を目指し、現在の形に至っている。 しかし、学びの深さについて、特に思考力を養うような形に内容を掘り下げる必要を感じている。今後は、単元導入として先行オーガナイザーを利用して授業内容の疑問点を学習前に生徒たちに出させるグループワークや、単元の学習後に論述問題に取り組むグループワークを取り入れること、学習内容を発表する機会を作ることなどを検討中である。
生徒の身体性について、ペアワークで正対することや相手を見て聞くなどのことは、1ヶ月ほど指導し続けると生徒もほぼできるようになる。しかし、生徒全員に徹底できているわけではない。 単独で指導するだけでなく、学年でルールを決めて身体性についての指導をしていくべきだと考えている。身体性の中身については、今年度は1学期にペアワークでの体の向きや、聞く際の視線について指導してきた。 2学期にはこれに加えて自分のメモを相手に見せながら、相手の目を見て説明するという指導をしていこうと考えている。どこまで生徒に要求するか、どの段階で要求するかを今後考えていきたい。
現在は授業内でできるだけ完結するように授業デザインをしている。今後は授業の受動的な部分(ノートの空欄穴埋めなど)を家庭学習とし、授業でアクティブラーニングを取り入れる時間を確保していきたい。
出口 善明(でぐち よしあき)@清教学園中・高等学校(社会科)