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本校では新学習指導要領の実施に向けて、教科で育成を目指す資質・能力の向上はもちろんのこと、情報活用能力と市民として求められる資質・能力の向上にも焦点を当てて、各教科が授業に取り組んでいる。年間指導計画の中で教科・情報活用・市民として求められる資質・能力の育成を図る内容や時期を明確にし、単元構成に反映させるようにしている。
国語科の年間指導計画は図1のとおりである。
本単元において育成を目指す資質・能力として、教科においては3つの説明文を比較しながら読むという読むことの領域、情報交流の際に必要になる話すこと・聞くことの領域、更には比較しながら読んだ経験をもとに意見文を書くという書くことの領域という3つの領域で育成を目指す資質・能力を中心に単元を構築した。
また、本単元では下記、2つの帯単元を導入している。
① 書写、特に硬筆分野における資質・能力を育成する活動。
→ 国語科には学習内容の定着に継続を要する分野(漢字や文法等)があると考えている。今回は硬筆分野に焦点を当てて、1単位時間で指導するよりも、日々の継続的な指導で効果的に資質・能力の育成を図ることをねらいとしている。
② 情報活用、特に情報と情報技術を適切に活用するための知識と技能の資質・能力を育成するための活動。
→ 本校にはchromebookというノート型PCを生徒が1人1台ずつ所有しているという学習環境がある。今回はそのchromebookを活用し、1単位時間の振り返りを入力させることで情報活用の資質・能力を育成することをねらいとしている。また、この振り返りはアクティブ・ラーニング型授業において、個‐協働‐個の学習サイクルを生み出すことにも必要なことであると考え、帯単元として導入している。
本単元で育成を図ろうとしている資質・能力をまとめたものが図3である。
本単元を13時間で構成した。本単元の指導計画は図4のとおりである。
平成29年12月8日に授業公開を行った際の1単位時間の指導案は図5のとおり。
教材は三井はるみ「言葉のゆれを考える」、教科書は「伝え合う言葉中学国語1」(教育出版)である。
前時までに生徒は「言葉のゆれを考える」の筆者の主張を読み取り、その根拠となる部分を本文中の表現から見つけている状態である。本時直前の課題としては、その根拠となる部分についての問いを作成してくることを個人課題として設定した。
本時では、その課題であった問い(個)を、仲間と交流し推敲するという活動(協働)を通して、より筆者の主張への理解を深めるために、学習課題を「主張にたどり着くための道筋をQ&Aで紹介しよう!」と設定し、新学習指導要領の知識・技能「比較や分類、関係付けなどの情報の整理の仕方」の資質・能力の育成を図ることをねらいとしている。
また、授業の最後には帯単元として設定した1単位時間を振り返るという活動(個)を取り入れることで、アクティブ・ラーニング型授業の個‐協働‐個の学習サイクルも設定した。図6は授業の様子を撮ったものである。
硬筆分野の資質・能力の育成と情報活用の資質・能力の育成において、帯単元を設定し、日々、短時間ではあるが、継続させたことには一定の成果があったと考えている。
硬筆分野の資質・能力の育成では、日々、継続させることで、文字を書くポイントを意識するようになり、他教科でノートを書いたりする際においても、その意識が波及し、丁寧な文字を書くことを意識する機会が多くなっている。また、国語科においては漢字や文法等、学習内容の定着に継続を要する分野があるため、今後も帯単元の活用を積極的に考えていきたい。
情報活用の資質・能力として焦点を当てた「情報と情報技術を適切に活用するための知識と技能」については、非常に成果があったと考えている。
アクティブ・ラーニング型授業の場合、生徒自身に学びの振り返りを行う時間を設定しないと、活動のみの授業になってしまう場合が多々ある。今回は10分間で200字以上という条件のもとに、学習課題に対しての成果と課題を振り返らせたことで、生徒自身にも単元が進んでいくにつれて自身の成果と課題が明確になり、達成感が生まれるようになってきた。また、本単元ではchromebookというノート型PCを振り返りに活用したことで、その振り返りを短時間で教師が集約し、目を通すことができるという効果もあった。更には、1単位時間の振り返りがどんどんと教師側にも、生徒側にも蓄積されていくため、プリントを回収し返却するという行為における教師側の手元に記録が残りにくいというデメリットを解消できることもわかった。今後もchromebookというノート型PCを効果的に活用できる場面を考えていきたい。図7は振り返りが蓄積されているスプレットシートの例である。
生徒が送信した日付や時間などが自動的に入力され、200字以上の字数にならないと送信できないなどの条件の設定を行うこともでき、振り返りの蓄積には重宝した。
2つの帯単元を1単位時間の中で設定したことにより、国語科における資質・能力の育成を行う時間が、1単位時間の中で少なくなってしまった。当然のことではあるが、単元や1単位時間を構築していく段階で、より生徒の活動をイメージし、適切な時間配分にする必要がある。また、教師自身の指示の言葉などにも課題があり、活動時間を確保できない場面もあった。その時に必要な指示の言葉をより具体的にイメージし、50分間という1単位時間を効果的に活用していく必要を感じている。
今後も年間指導計画や単元の指導計画、更には1単位時間の指導計画を、生徒の活動の具体的なイメージをもとにマネジメントしていき、ねらいとしている資質・能力を、アクティブ・ラーニング型の授業で効果的に育成できるような実践を積み重ねていきたい。
(*参考)(AL関連の実践)岩井智宏(桐蔭学園小学部)「常時活動を大切にスムーズな授業の流れにのって学びに向かう力を育もう-授業の中での不自然な切れ目は教師の都合-」
(*参考)(AL関連の実践)中村憲幸(東山中学・高等学校)「楽しく思考力を育てる英語の授業(2)-生徒の変化からみられる効果-」
森谷 剛(もりや つよし)@北海道教育大学附属函館中学校