このページは、溝上の学術的な論考サイトです。考えサイトポリシーをご了解の上お読みください。         溝上慎一のホームページ

 

(AL関連の実践)【高校/宗教】禅の具現化を目指したアクティブラーニング授業

森信明(花園中学高等学校)

花園中学高等学校のウェブサイト

(溝上のコメントは最後にあります)

対象授業

  • 授業:高校1年生 宗教
  • 生徒数:87名
  • 教材:なし
  •  

     

    はじめに

     本校は京都市右京区に所在し、隣の臨済宗妙心寺派が運営母体となっていることから、建学の精神に「禅のこころ」を置いている。その具現化の一つとして、「宗教」という授業を生徒たちは週に1回受けることになる。今までは坐禅と講話という2本柱で授業を構築しており、坐禅では自分自身を見つめることの実践、そして講話では教員から一方通行の授業形態であった。長年、保たれた授業形態を変えていくことは、少し抵抗を感じる者もいただろうが、本当の建学の精神の具現化に向け、新たな一歩を踏み出すべきことは、必至事項であったと考える。

     

     

    第1節 目標

     各学年やコースにより設定目標は異なり、段階を踏んだ目標設定となっている。また、3年間ないし6年間を通した目標設定も存在する。それは「禅に対する理解を深め、自分自身の人生を豊かなものにすること」である。今までの既存の一方通行型の授業形態では深めることや、生徒の深めた成果を見ることも出来なかったことに対し、ALを導入することで、生徒の思考の深まりを確認し、そこから反省し授業発展に活かせることを学んだ。

     

     

    第2節 授業形態

     宗教の授業では宗教講堂という大きなホールに2~3クラス合同に授業を行う。(高校生のみ)講堂に入堂する際は入り口で合掌・一礼し、合掌のまま進み自席に着くと、もう一度合掌・一礼をしてから席に着く。靴下を脱ぎスリッパをそろえ、決まった作法で座を調える。(退堂時も作法に従い退堂する)次にチャイムがなり、教員の「静思」の号令で瞑想に入る。次に、お経を唱える。ここまでの一連の流れは全校、どのコースにおいても行うものである。お経が終わると授業の内容に入る。大きなテーマを2~3回に分けて授業を展開していく。また、ワークシートを導入し、自分の考えを整理すること、相手の考えを理解し認めていくことを実践していく。
     【授業の流れ】
     ①お経(10分)
     ②本時の目標やテーマを提示 講義(10分)
     ③ペアワークやグループワーク(5分)
     ④講義(10分)
     ⑤ペアワークやグループワーク(5分)
     ⑥発表(5分)
     ⑦振り返り(5分)

     

     ①~⑦までを50分の間で行っていくが、時間が足りないことが多々あるため、何かを削ることが多い。特に③と⑤のペアワークやグループワークをまとめてしまうことなどがある。授業の内容によって、柔軟に授業形態を変化させていくことを念頭においている。

     

     

    第3節 授業実践例

     平成29年6月23日に行った高校1年生対象の授業を一例として紹介する。
    教材は「禅語 一挨一拶」禅語を一つ紹介し、その禅語について理解を深め、禅の教えに触れることや、自分自身の生活に活かすことを目標にしている。
     まず、今回の禅語に関するワーク①を一つ行う。今回は「挨拶」がテーマであるので、隣の人と握手をしながら挨拶、自己紹介をして、1分間見つめあうというワークを行った。少し恥ずかしい部分があるが、アイスブレイクにはとても良い効果を発揮してくれた。図1はその様子を撮ったものである。ワーク①をした後、ワークシートに感じたことをメモするように指示する。次に、禅語の「一挨一拶」についてパワーポイントを使用しながら講義し、紹介する。その後、ワーク②として挨拶に対する問いを立て、ワークシート(図2を参照)に書き込んでいく。

     

     
            図1 ワークの様子         図2 ワークシート(PDF

     

     ワーク②の問いは「挨拶の必要性とは?」というもので、道徳的な問いではあるが、高校1年生のこの時期にやっておきたい題材である。多くの生徒が「挨拶の必要性」について考えたことは無い。「なぜ挨拶が必要なのか?」「本当に挨拶は必要なのか?」について考えを深めていく一方で、挨拶の語源である、「一挨一拶」についても学んでいく。ワークシートに自分の意見をまとめ、続いてペアワークを行い、個人の意見を共有する。この時、時間を3分間と決めて行う。タイマーは前のスクリーンに映しておく。

     

      図3 タイマーを前に表示

     

     また、ペアワークを行う際はルール(図4を参照)を明確にしておく。ルールは3つにしている。一つ目はお互いに向き合うこと。2つ目は「→」と書かれているが、これは、相手に興味を持ち聴くこと。傾聴を意識している。3つ目は、「笑顔で」。お互いの意見が言いやすい雰囲気をつくることを意識している。スクリーンに映し全員で確認する。その際に、ペアワークの後に発表があること、誰に当たるか分からないことも指示しておく。
     図5はペアワークの様子を撮ったものである。ペアワークの後に発表に移る。発表者はランダムに当てる。(乱数のアプリケーションを使用。)発表は自席で発表させる。教室の前での発表も考えたが、講堂という広い空間のため、移動に時間がかかることなどを考慮し、自席での発表にしている。そのため、発表の際は発表者に注目することを強調している。
     図6は発表の様子を撮ったものである。最後にペアワークに対する振り返り、授業に対する振り返りをさせ、授業を終える。

     

     
          図4 ペアワークのルール              図5 ペアワークの様子

     


            図6 発表の様子

     

     

    第4節 振り返りと今後の課題

     この1学期を振り返ると、一番大きく変化したと感じることは、生徒の授業に対する参加姿勢である。生徒たちは、宗教が自分たちの生活に密接に繋がっていることを感じ、自分たちの生活に活かしていこうという気概を見ることができた。また、生徒たちの思考を深めることも出来ていると感じる。ワークシートやペアワークを通して様々な角度から考え、意見を共有することは、社会の場ですぐに必要となる力であるだろう。
     しかし、課題もある。その一つは教員側からの問いが浅はかなものであると、思考の深まりは感じることはできないことである。授業目標を明らかにし、その目標を達成できる問いでなければならないと感じる。問いは様々な面から練られたものでなければならない。その手段の一つがワークシートを洗練していくことである。ワークシートを通して、生徒自身が自分の考えを整理し、伝える手助けになるからである。また、生徒自身が振り返りをするシートも用意するべきだろう。現状では、単発の振り返りをしているが、学期ごとや、1年を通して使える振り返りシートを用意し、生徒自身が成長や学びを実感できる工夫が必要であると感じている。
     もう一つの課題としては授業規律である。1年のうちは緊張感もあり良い雰囲気の中で授業が出来ているが、2年3年となるにつれ、授業規律が緩やかになる傾向が今までにあった。それらの原因は様々にあると考えられるが、このAL導入を機に改善し、授業規律の中に深い学びを実践できるようにしていこうと考えている。その中の必要な実践として、ALの必要性を生徒に向け語り続けることが重要であると考えている。

     

     

    溝上のコメント

     

    【参考ページ】

    (桐蔭学園)個-協働-個の学習サイクル

    (桐蔭学園)桐蔭学園のアクティブラーニング型授業の改革2015-YouTubeビデオの解説 v2.1

    (桐蔭学園)教室をコントロールする

    (AL関連実践)【中学高校】木村浩一(花園中学高等学校・教務部長)「花園中学高等学校 授業改革の取り組み-アクティブラーニング型授業導入を目指して」

     

     

    プロファイル

    森信明(もり のぶあき)@花園中学高等学校・宗教科

    • 一言:宗教の授業は生徒にとって生活の基盤となるところです。ALを導入し、宗教が生徒たちの生活とリンクしていることを実感しています。今後、授業をするなかで生徒たちが生き生きと参加できる空間を作っていきたいと思います。

     

     

     

     

    Page Top